「ニューノーマルを生き抜く人材戦略」をテーマに、2020年11月30日(月)、12月4日(金)に開催するオンラインイベント「CHO Summit 2020 Winter」。パネルディスカッションで取り上げるキーワードを掘り下げる。第1回は「エンゲージメント」。コロナ禍で対面コミュニケーションが減る中、重要性が高まっている。

(写真:123RF)

 VUCA時代の到来によって経営の不確実性が高まる一方、コロナ禍によって社員が求める多様な働き方に対応・実現せざるを得なくなった。早急に在宅勤務やオンライン化を進めた結果、対面コミュニケーションの機会が減り、組織と個人の関係などが変化することに危機感を抱いている企業は少なくない。そこで注目を集めているのが「エンゲージメント」である。

 エンゲージメントとは、「会社に対する愛着心とより積極的な組織貢献行動」を指す。職務満足、組織コミットメント、役割外行動などの既存の概念と類似しているが、従来の考え方と一線を画しているのは、「愛着心」に基づく期待をはるかに超えた貢献行動に着目している点だ。具体的には、社員が自発的に行動し仕事に熱中したり、仲間同士が信頼し合い、組織の成功のために一丸となるチーム意識を生み出す態度を取ったりすることなどが挙げられる。

 昨今は「ワーク・エンゲージメント」という概念も注目を浴びている。慶応大学総合政策学部の島津明人教授は「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」と定義。仕事から活力を得て生き生きしている「活力」、仕事に誇りややりがいを感じている「熱意」、仕事に熱心に取り組んでいる「没頭」という3つの要因がそろっている状態を「ワーク・エンゲージメントの高い状態」としている。

トレーニングを重視する外資、雇用保障を拠り所にする日本

 以前に人事コンサルティング会社がエンゲージメントを測定したデータを使って、エンゲージメントが高める要因について分析を行った。従業員からのエンゲージメント・スコアの高い日系と外資系企業とスコアの低い日系と外資系企業のデータを用い、エンゲージメント・ドライバーがエンゲージメント・スコアにどう影響しているかについて分析した。

 それぞれのドライバーについて6点満点で評価してもらい、平均4.5点以上のドライバーをエンゲージメント向上に寄与する「エンゲージメント項目」、逆に平均3点未満はエンゲージメントの低下をもたらす「リ・エンゲージメント項目」とする。またハイスコア企業群とロースコア企業群の回答で、統計的に有意な差がある項目についても調べ、以下のような分析結果となった。

A.日系企業ハイスコア企業群と日系企業ロースコア企業

 日系企業におけるエンゲージメント・スコアは国際的水準に比べると低い結果で、ハイスコア企業とロースコア企業で有意差があるエンゲージメント・ドライバーは「役員への尊敬」だけだった。また「雇用保障」は、ハイスコア/ロースコア企業ともに、6点満点中4.5点以上のエンゲージメント項目となっていた。

B.外資系企業ハイスコア企業群と外資系企業ロースコア企業群

 外資系企業では、ハイスコア/ロースコア企業ともに、「顧客」がエンゲージメント項目になっていた。ハイスコア企業では「マネジャーへの尊敬」「同僚」「トレーニング」もエンゲージメント項目になっている。ロースコア企業は「トレーニング」「福利厚生」がリ・エンゲージメント項目となっており、これらに不満があると従業員のエンゲージメント低下につながると予想される。

 ハイスコア企業とロースコア企業で有意差がある項目としては、差が大きい順から「トレーニング」「福利厚生」「給与」「ワークライフバランス」「役員への尊敬」「マネジャーへの尊敬」であった。「職場環境」「雇用保障」「承認」には有意差がなかった。

C.日系・外資系企業ハイスコア企業群と日系・外資系企業ロースコア企業群

 日系・外資系を問わず、ハイスコアとロースコア企業群の比較も行ったところ、有意差のある項目はスコア差が大きい順から「トレーニング」「福利厚生」「給与」「キャリア機会」「仕事業務」「ワークライフバランス」「役員への尊敬」「マネジャーへの尊敬」となった。外資系と日系が交じり合ったことで、Bの結果と比べ「キャリア機会」や「仕事業務」に関するドライバーに有意差が生まれたことが特徴的である。

 ハイスコア企業のエンゲージメント項目は「マネジャーへの尊敬」「同僚」「顧客」「トレーニング」となった。ただし「同僚」「顧客」についてはロースコア企業もスコアが高く、有意差はなかった。ロースコア企業のリ・エンゲージメント項目は「報酬」「福利厚生」「承認」「ワークライフバランス」だった。両企業群で有意差がなかったドライバーは「承認」「職場環境」「雇用保障」だった。