(写真:123RF)

 前回までにグローバル組織とその落とし穴についての話をしましたが、いくら立派なグローバル組織ができても、その組織が成果を上げられるか否かはリーダーの手腕にかかっています。多様な価値観を持つメンバーの集まりであるグローバル組織において、メンバーのエンゲージメントを高め、活力ある組織を作って成果を収めるのは至難の業です。

 多くの企業では、新任の管理職を対象に新任マネジャー研修をしています。評価方法など管理職に必須なスキルのほかに、組織運営やリーダーシップなど各社が工夫を凝らしていますが、重点はすぐに必要な管理職の必須スキルに置かれているのではないでしょうか。

 リーダーとマネジャーの違いは様々な説明がありますが、その一つに”Lead People, Manage Task”があります。業務を管理するのがマネジャーで、人を導くのがリーダーということです。日本の管理職は業務管理については、しっかりと意識して取り組み、目標を達成しているようですが、人を導くことについてはどうでしょうか。意識している管理職もいると思いますが、大半はあまり意識せず、業務管理をしっかりしていれば役割を果たせると考えているのが実態ではないでしょうか。

 ある海外子会社での出来事です。その会社は重要拠点だったので、本社から経験豊富で優秀な経営幹部が社長として着任しましたが、一人の優秀な現地の本部長が自信を喪失しました。理由は、社長から声をかけてもらえないことでした。実際には、社長はその本部長を「何も言うことがない」ほど、優秀だと高く評価していました。言わなくともすべて完璧にこなすので、会議のとき以外で声をかけなかったのです。しかし、本部長はいくら頑張っても声をかけてもらえないため、社長から信頼されていないのだと思い込み、落胆して自信を失ったのでした。

 なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。着任した社長はまさにエリートで、社内のエリートコースを歩んできました。エリートばかりいる組織では、上司が指示しなくても部下はすべきことを理解し、完璧に仕事をこなします。何も言わなくても支障なく仕事が遂行される集団なので、会議以外で上司と部下は話をする必要はありません。すべてのキャリアをそのような組織で過ごした社長は、上司と部下による1on1ミーティングをしたことがありませんでした。社長はこれまでの自分の体験を、海外子会社でも実践しただけだったのですが、本部長はそうは取らなかったのです。

 日本では社員の多くが日本人というだけでなく、終身雇用もあって会社特有の共通認識の風土、ビジネス慣習ができ、会議で伝えるだけで多くの仕事が進みます。このような状況では、業務を管理するマネジャーは必要ですが、人を導くリーダーの必要性は見えてきません。活力ある組織を運営するために本当は必要なのですが…。