質問や話をしないのは、興味がない証し

 参天製薬に在籍していたときのことです。米国子会社出張の2日目の朝、米国の人事部長がいきなり「あなたは私たちに興味がないの!?」と恐ろしい顔で迫ってきました。私は思わず「What? 興味がなかったら来てないよ」と返しましたが、人事部長は収まりません。理由を尋ねると「あなたは昨日の会議で、私たちにあまり質問をしなかった」と言うのです。

 前日の会議の目的はグローバル人事に関する米国人事との議論で、私が原案を説明し、米国人事が質問して議論するというものでした。私よりも米国人事が多く質問する会議だったのですが、人事部長はそうは思わなかったようです。「興味があれば質問するはず、質問しないのは興味がない証し」と捉えられたのです。海外の人とはかなりの年月一緒に仕事をしてきてわかっているつもりでしたが、それでも落とし穴に落ちたと感じた一件でした。

 海外の人に比べると日本人はあまり質問をしませんので、質問を“話”に置き換えてみるとわかりやすいかもしれません。「興味があれば話をするはず。話をしないのは興味がない証し」。これなら納得されるのではないでしょうか。

 海外のリーダーはとても積極的にタウンホールミーティングをします。いわゆる全体集会です。私は、当初はそういう習慣なのかという程度に思っていましたが違いました。「興味があれば話をするはず。話をしないのは興味がない証し」と、海外の人が認識しているなら理解できます。ここを理解していないとグローバルリーダーは務まりません。

 ミーティング自体も日本の企業の全体集会とはかなり異なります。日本の場合は社長や本部長の話がメインで、従業員からの質問はあまり出ませんが、海外は逆です。社長や本部長の話は短く従業員からの質問が多く、まさに対話です。これは少人数でも数百人のタウンホールミーティングでも同じです。伝達ではなく対話。「興味があるから、あなた(従業員)の話が聞きたい」ということです。

 さらに驚くべきは、海外のリーダーのフットワークの軽さです。日本である部門がグローバル会議を開催と聞くと、社長はどんなに忙しくても時間を作り、たとえ30分でもその部門のグローバル会議でタウンホールミーティングをしようとします。武田薬品工業に在籍していたときのグローバルHRオフィサーは、グローバル人事のシニアリーダー会議を、極力異なる海外子会社で開催するようにしていました。会議の開催時にはタウンホールミーティングを開いて交流を深め、同時に海外子会社の社長や人事シニアリーダーとの会議を持って、コミュニケーションに力を入れていました。

 シカゴに駐在していたときにも、タウンミーティングの重要性を実感した出来事がありました。日本から本社の社長がボストンの子会社に来たのですが、シカゴの子会社には寄らずに帰国しました。私は「社長は忙しいので無理もない」と思っていましたが、これは日本人の感覚でした。日本からボストンに行くにはシカゴの空港を経由するため、行きか帰りかのどちらかで半日あれば、シカゴでのタウンホールミーティングは可能です。それをしなかったということで、シカゴの従業員は「社長は私たちに興味はないんだ」と口々に言っていました。それほどまでにタウンミーティングはコミュニケーションの場であり、興味があることを示す証しでもあるのです。