必要なのは、演じることとスマイル

 リーダーは、やると決断した重要な決定は、厳しくても達成しなければなりません。そのためには人と組織を動かす必要があります。組織の決定であればメンバーは動きますが、人には理屈だけではなく感情もあり、気分も含めたコンディション次第で成果も左右されます。「あなたが言うのであれば」ということもあれば、その逆もあります。「あなたが言うのであれば」となるには、日々の積み重ねによる強固な信頼関係が重要ですが、感動体験があると「この人のためなら」という思いになることがあります。

 私が武田薬品の人事部に転職してまもない時期の話です。海外企業の厳しい買収交渉の中、一時的ではあるものの人事部が会社に迷惑をかけてしまったことがありました。社長には私から報告するつもりでしたが、買収プロジェクトの責任者だった常務は「すべて自分の責任である」と社長に説明し、私には一切話をさせませんでした。そればかりか「失敗など気にせず、明日からも思いっきり行け」と檄をもらい、「これがタケダイズムか」と感動したことを覚えています。最終的に企業買収は成功。後にスタンフォード大学のMBAのケーススタディーにもなりました。

 人を感動させる場面は滅多にありません。ましてや計算してできるものではありません。人生観というか仕事観というか、軸となる考えを持った人格者だからこそできることだと思います。ぶれない軸を持った人格者は洋の東西を問わず、人を引きつけます。

 海外のリーダーと仕事をしていて感じるのは、彼ら彼女らはメンバーの前で意識してリーダーらしく振る舞うことがあるということです。それはただ単に本人がそうありたいだけでなく、メンバーが自分のボスは誇れるリーダーであってほしいと望んでいるからです。リーダーはタウンホールミーティング、リーダーミーティング、1on1の場面に応じて、その振る舞い方を使い分けています。タウンホールでの強いリーダーが1on1でフレンドリーに接してくれると、つい引き込まれてしまいます。見ていてうまいと感心します。

 このとき、多くのリーダーは意識してリーダーらしくあろうと、まさにリーダーを演じています。演じ続けることによって自然体の素晴らしいリーダーになるのだと思います。日本とは異なる環境で、ダイバーシティに富んだ組織で日本人がグローバルリーダーになるには、まず“演じる”ことではないでしょうか。

 魅力的なグローバルリーダーになるのは簡単ではありませんが、とっておきの方法があります。それは笑顔、スマイルです。リーダーの笑顔はリーダーが思っている以上にパワフルです。困難な状況でもリーダーが笑顔でいると、メンバーは安心します。逆にリーダーが厳しそうな表情や不安そうにしていると、いくら大丈夫だと言ってもメンバーは信じません。リーダーのスマイルは組織に安定をもたらします。社長に怒られてもメンバーの前では笑顔でいましょう。本当に厳しいことを伝えたいときだけ厳しい顔になりましょう。その厳しい表情は100倍伝わります。

 武田薬品での米国駐在時代、上司の人事部長は非常に厳しい人で私はよく怒られましたが、何があっても帰るときは必ず満面の笑顔で「See You!」と言ってくれました。「今日のことは忘れて明日がんばれ!」のメッセージでした。リーダーのスマイルはマジックです!

 次回は、グローバルで成功するマネジメントについて見ていきます。

今回のポイント
1 興味があれば質問するはず。質問しないのは興味がない証し
2 「決めない寛容」と「決める勇気」
3 リーダーを演じること
4 魔法のスマイル