(写真:123RF)

 前回までに、グローバル組織におけるリーダー像やリーダーの資質について話をしました。しかし、グローバルリーダーとしての資質が高くても、マネジメント方法が悪ければグローバル組織は動きません。マネジメントの慣習は生活習慣や文化と密接に関連があり、日常の生活様式がわかると見えてくるところがあります。

 昭和の時代、1979年に米国の社会学者エズラ・ヴォーゲル氏が著した『ジャパン・アズ・ナンバーワン』がベストセラーになりました。日本経済の黄金期を象徴するような書籍で、日本を称賛するだけでなく、米国人も日本的経営を学ぼうという内容でした。

 しかし、現在の日本はというと、2017年の経済協力開発機構(OECD)加盟国の労働生産性国際比較では、加盟36カ国中、時間当たり労働生産性が21位、一人当たり労働生産性が22位。国際経営開発研究所(IMD)の世界競争力ランキングでは、総合評価で63カ国中、2018年の25位から2020年は34位に下がっています。特にビジネス関連が悪く、「ビジネス効率」は55位、「マネジメント慣行」はなんと62位でブービー賞です。また、世界経済フォーラム(WEF)が発表するジェンダーギャップ指数では、2020年は121位という状況です。

 これでは個人にグローバルリーダーの資質があっても、日本のビジネス手法やマネジメント慣習をグローバル組織で行うことで最下位レベルのリーダーと思われて、人も組織も動かないということです。なぜ、日本のマネジメント方法は受け入れられないのでしょうか。

 米国に初めて駐在したときは驚きの連続でした。机に腰を掛けるというのはかわいいもので、「それでいいの?」ということがたくさんありました。例えば新聞配達人は、自動車やバイクで走りながら各戸の玄関めがけて新聞を投げます。コントロールが悪ければ玄関まで届きませんし、ビニール袋に入っていても雨に濡れたり、なくなったりします。そのようなときは、ネットか電話で連絡すると翌日届けてくれるという仕組みでした。

 日本人の感覚では「けしからん!」の一言ですが、少ない新聞配達人で多くの家に新聞を届けられるので配達コストは下がります。安価な新聞なので、盗難があって翌日再配達しても追加コストは微々たるものです。当地のやり方を見ているうちに、新聞の配達方法としたら「これもありかな」と思えてきました。ちなみに『シカゴトリビューン』紙の購読料は、日本の新聞の半分程度でした。

 返品・交換の習慣にも驚きました。シカゴに赴任したばかりの頃、買った商品のパーツが足りなくて店に交換に行きました。「自分がなくしたのではない。最初から入っていなかった」と懸命に説明していたら、店員は「レシート見せて。交換するから」とあっさり交換してくれました。レシートがあれば即交換、説明は不要。これが返品・交換の習慣です。

 日本では品質管理を徹底して不良品が出ないようにしますが、米国ではたまに不良品が出ることを想定して、スムーズに新品に交換する仕組みを構築します。これは、ビジネスも同じです。まだ相互理解が進んでいない日米共同プロジェクトでの話です。検討段階なのだから細部の確認に時間をかけるよりは、多少の粗さがあっても早く提案して前に進もうとするのが米国の手法。これに対して、日本はたとえプロジェクトの検討段階であっても、入念に確認して完璧な提案を作るという手法でした。

 新聞配達や返品・交換の仕組みは生活習慣ですが、その感覚がビジネスの慣習にも影響しているようです。だとすれば、米国人に日本の生活習慣に根付いた日本のビジネスの方法を押し付けるのは困難だと思います。