HRビジネスパートナーは現代の諸葛孔明?

 三国志に登場する諸葛孔明は、彼が仕える武将、劉備の野望を実現させるために、軍師として見事な戦術を展開していきます。経営の思いを実現させる組織風土を築くのがHRビジネスパートナー(HRBP)の役割とすると、HRBPはいわば現代の諸葛孔明といえるかもしれません。

 HRBPは、1997年に米ミシガン大学のデイブ・ウルリッチ教授が『Human Resources Champions』で提唱した“Strategic Partner”から広まったといわれています。ウルリッチ教授は「事業戦略に基づき人事戦略を実践すること」を戦略人事とし、この役割を果たすために、人事はStrategic Partnerとなって「事業戦略の理解を深め、事業戦略の成功に貢献する」としています。

 つまり、HRBPは事業部長の人事パートナーとして「事業戦略を理解し、事業の人事課題に対して戦略的で独創的なソリューションで解決し事業に貢献する」のが役割というわけです。そのため、海外のリーダーはHRBPを部門のシニアリーダーチームのメンバーにして、会議には毎回参加させます。そうしてHRBPが事業戦略をよく理解し、事業戦略の実現に向けサポートできる環境を整えます。本社人事が決めたことを運用する部門人事とは、役割が明確に異なります。

 武田薬品工業で本社部門のHRBPのグローバルヘッドの内示を受けたときのことです。内示の知らせを聞いた外国人CFO(最高財務責任者)は、早々に私との電話会議を求めてきました。着任する1カ月半前だったのですが、「初日からフル回転でサポートしてもらいたいので、すぐにでも部門戦略や人事課題について相談したい」ということでした。

 一方、日本の役員からはそのような依頼はなく、着任してご挨拶に伺おうとアポイントを取ろうとすると、一旦は「藤間君のことはよく知っているし、人事が私のところに来ると、何があったのだと周りが驚くから来なくていいよ」と断られてしまいました。

 この反応の違いは想定通りでした。事業部門ではHRBPを導入していましたが、本社の管理部門としてHRBPを置くのは初めてのことでした。それまでは、よほど大きな人事制度改革でなければ人事が直接会いに行くことはなく、社内掲示やウェブページで告知を発信して終わりだったからです。

 海外ではタウンホールミーティングや様々な場面でよく会話をするとお伝えしました。そして「社長が言っているから決定した」ということは通じないこともお話ししました。藤沢薬品工業で米国に駐在しているとき、日本で開催されたグローバル会議に出席したシカゴのリーダー達が「会議で誰も発言しない!」と、心底驚いていました。会議にもよりますが、日本では部長のような上位職からの話には、スタッフからは質問もせず会議決定となることがあります。それを指してのことでした。

 人事施策に限りませんが、施策や実行計画は社員が納得していなければ効果は上がりません。人は納得して初めて自主的に動き、組織も動きます。上位職から一方的に伝えるのではなく、会話を通じて意見を聴き、考えが異なれば議論をして納得を引き出さなければなりません。ましてや痛みを伴うような組織風土改革ではなおさらです。

 では、海外のHRBPはこうした難易度の高い役割をどのように果たしているのでしょうか。印象に残っているのは「とにかく、よく話をしている」ということです。サポートする事業部長だけでなく、シニアリーダーチームのメンバーともよく面談をして、事業や人事の課題を引き出すように聞いています。そして事業部特有な課題に対して、独自の人事施策を提案し解決していきます。

 あなたの会社の人事は各部門と会話ができているでしょうか?