CoEとHRBPは人事の両輪

 海外の人事組織は、CoE(Center of Expertise)とHRBPの2つの組織で構成されることが多く、CoEとHRBPは人事の要です。会社によっては、「シェアードサービスセンター」をつくり業務の効率化を図っているところもありますが、今回はCoEとHRBPを説明しましょう。

 CoEは評価、報酬、人材開発、組織開発、採用など、専門領域において人事制度や人事施策を立案し運用する機能で、日本企業の本社人事の機能とほぼ同じです。HRBPの役割は、上述のように事業戦略を理解し各事業の人事課題に対して、戦略的で独創的なソリューションで解決し事業に貢献することです。

 人事戦略、人事施策が成果を上げるためには、組織で確実に運用されなければならず、その役割をHRBPが担っています。また、CoEが立案する人事施策を実効性の高いものにするためには、事業や部門の状況を理解することが重要で、それにはHRBPとの連携は欠かせません。CoEとHRBPは、まさに人事の両輪です。

 連載第2回「グローバル企業に必要なガバナンスモデルとは」で、会社のグローバルビジネスのステージに応じて組織構造も変わることをお話ししましたが、人事組織も同じです。私が参天製薬に入社した2018年当時は、各地域の人事部は本社人事へのリポート関係がなく、独立していました。しかし翌年、人事をグローバル組織にした際、まず行ったのは各地域の人事部長が本社の人事本部長にリポートする組織にすることでした。同時に、日本の人事を海外と同様にCoEとHRBPの組織にしました。

 このとき細心の注意を払ったのは、「いかにして海外の人事メンバーを参画させて、グローバルワンHRをつくるか」でした。そのために2つの仕掛けをしました。一つは「HRシニアリーダーシップチーム(HRSLT)」です。

 HRSLTは人事本部長の直属のシニアリーダーを中心に、各地域の人事部長を含めて構成されたグローバル人事の意思決定機関です。会社の経営会議のような機能で、グローバル人事の重要案件を意思決定します。グローバル人事には本社も子会社もなく、日本の人事も海外の人事も同格ということです。

 もう一つは「グローバルタスクフォース(GTF)」です。理想の人事のグローバル組織は、評価や人材開発などのCoEごとに、グローバルヘッドとそのメンバーによるグローバル組織を構成することです。しかし、それには組織のグローバル化に対する成熟度と組織規模の課題があるため、すぐにはそのような組織にはしませんでした。

 ただ、組織のグローバル化を推進する必要があるので優先順位の高いグローバル人事課題を7つ選び、課題ごとにグローバルプロジェクトチームであるGTFを立ち上げました。評価制度であれば「評価GTF」がグローバルで連携し、新しいグローバル評価制度をHRSLTに提案します。GTFを立ち上げることによって、シニアリーダーだけでなく、すべての地域の多くの人事メンバーがグローバル案件に関わり、提案する機会を得ました。

 GTFを立ち上げたことで、世界中の人事メンバーが人事課題に対し解決策をHRSLTに提案し、グローバルなHRSLTが審議し決定する。本社も子会社もないグローバルワンHRの組織風土を醸成することができました。

 戦略と組織風土は種と土壌の関係と似ているとお話ししました。変革時の組織風土改革の鍵は「対話による納得」です。CoEが素晴らしい戦略や施策をつくり、HRBPが組織に浸透させて組織を動かす。そのためにCoEとHRBPが強固に連携する。生活習慣として対話による納得が当たり前のグローバル組織では、その重要性はさらに高まります。

 次回は、グローバルなCoEについてお話しします。

今回のポイント
1 戦略を実現するには戦略実行可能な組織風土を築く
2 HRビジネスパートナーは現代の諸葛孔明
3 HRBPで小さくスタートし賢く失敗
4 CoEとHRBPは人事の両輪