(写真:123RF)

 7回に渡って、グローバル人事の極意をお届けしてきました。連載最終回となる今回は、CoE(Center of Expertise)に焦点を当てて、グローバル人事の極意をお伝えしたいと思います。

 自動車レースのF1をご存じの方は多いと思いますが、強いチームはドライバーが速いだけでなく、速いレーシングカーを作る技術陣とチームをまとめ上げる監督がいます。技術陣にはエンジン、ブレーキ、ハンドリング、車体、空力など様々な専門家がいて、素晴らしいレーシングカーを作り上げます。

 ドライバーはそのレーシングカーを運転するたびに、レーシングカーの状態を技術陣にフィードバックし、技術陣はそれを受けてより速いレーシングカーを作ります。そうしたチーム全体を監督がマネジメントしていくのです。

 人事はF1チームに似ていると思います。CoEがレーシングカーという素晴らしい人事施策や人事制度を作り、HRBP(HRビジネスパートナー)がレーシングドライバーのごとく、部門で人事施策や人事制度を運用して事業戦略の達成に貢献します。HRBPが部門からのフィードバックをCoEに届け、CoEはそのフィードバックを基にさらに人事施策や人事制度を磨き上げます。人事部長はF1チームの監督のように人事部をマネジメントします。

 CoEがグローバルで貢献するためには、グローバルに通用する人事施策や人事制度を構築しなければなりません。新卒一括採用と終身雇用が基盤となって構成された日本の人事制度は、海外の人事制度と比較するとユニークなところが多々あり、日本の人事の常識はグローバルでは通用しません。すべてについてお伝えすることができないので、代表的な事項についてお話します。

 人事制度をグローバル展開して最初に驚くのは報酬水準の違いだと思います。部長級以上のポジションだと、米国やスイスなど欧米諸国だけでなく、中国やシンガポールでも日本の報酬水準のほうが低くなっています。国によって報酬水準が異なるのはよく知られていることなので特に驚きではありませんが、日本人が最初に違和感を覚えるのは、同じ職務等級でも職種間で報酬水準が異なることです。

 ジョブ型で職務等級を評価するときは、ポジションの役割や貢献によって評価するので、日本では同じ職務等級であれば報酬水準は同じと考えられています。しかし、海外では職務等級が同じでも報酬水準は異なります。この違いは社内のバランスを見ているか、社外の労働市場を見ているかの違いによります。

 

 日本は長期雇用と社内ローテーションが一般的であるため、社内で同じ職務等級であれば報酬も同じであるほうが理解を得やすく、運用上もスムーズです。

 一方、会社ではなくジョブで仕事をしている海外では、社内の報酬バランスではなく、社外の労働市場におけるポジションの市場価値で報酬が決まるほうが合理的です。報酬担当は複数の報酬の市場調査データを基に、ポジションごとの適正な報酬水準を確認し、同じ職務等級でも異なる報酬水準設定をしています。

 ポジションごとの雇用の意味合いが強いので、経営陣となると個別の雇用条件(Executive Perks)を要求してくることも多く、これを「わがままで自己主張の強いやつ」と誤解していては、グローバルマネジメントはできません。