グローバルに学び、日本らしさで勝つ

 タレントレビューの効果は様々な場面で出てきます。将来の社長候補、経営陣候補となる人材は優秀なので、部門が手放さず経営幹部としての育成ができないことがありますが、タレントレビューでラーニングアジリティーがハイとなる優秀人材は全社の財産で会社として育成すると決めると、他部門への育成的ローテーションが可能となり、計画的に将来の社長や経営幹部を育成できます。

 キャリア面談とキャリア自律も促進されます。マネジメントかスペシャリストか、どちらのキャリアを選ぶかは本人の意思が重要で、タレントレビューでラーニングアジリティーを決めるときは、事前にキャリア面談をして本人のキャリア志向を確認することになっています。よって、タレントレビュー前にキャリア面談が実施され、タレントレビュー後、上司・部下で育成計画を作成し、キャリア自律を促します。

 リーダーの人材育成の意識も高まります。タレントレビューは部門長とその直属のリーダーで議論します。各リーダーは自分の組織のメンバーのレビューを具体的な事例を示しながら説明し、他のリーダーは様々な質問をして確認し公正なレビューをします。この場面で発言をするために、日ごろから他組織のメンバーにも関心を持って観察するようになりますし、どのような人なのか知るようになると自然と関心も高まり、直属の上司だけでなく、部門のリーダーが一体となって、部門のメンバー全員を育成するようになります。

 経営陣とのタレントレビューは、各部門のタレントレビューで選ばれた将来の社長、経営陣の候補者について議論され、経営陣候補者の人材パイプラインが見える化され、サクセッションプランも完成します。

 このようにタレントレビューを実施すると、組織強化と人材育成が推進され、キャリア自律や人を育てる組織風土が醸成されます。タレントレビューは人事のグローバル化においては人事が学ぶべき必須項目ですが、グローバル化を推進していなくても、導入する価値は大いにあると思います。

 2000年に人事部に異動してから、私のほぼすべてのキャリアはグローバル化でした。グローバル化を進めれば進めるほど、日本の人事はグローバルの常識とは異なっていることを実感しました。グローバルで相手にしてもらうためにはグローバルの常識を身に付けなければなりません。しかし、これはグラウンドに立てただけです。それも自分のホームではなく相手のホームグラウンドです。グローバルで戦うには、相手にはない“日本らしさ”を発揮しなければ勝てません。

 では、日本らしさとは何か――。一つの答えが「インティグリティー(Integrity)」です。インティグリティーとは倫理観であり、高潔な人格を意味します。私は、日本人は世界の中でもインティグリティーの資質が高く、強みであると考えます。

 企業の経営もかつての株主至上主義からESG経営、SDGs経営にシフトしてきており、インティグリティーを軸とする経営が脚光を浴びてきています。今回の連載でもリーダーシップの重要性を説いてきましたが、日本らしさで勝つには、「インティグリティーの高い、高潔な人格によるリーダーシップ」が重要なのではないかと思います。

 かつて、藤沢薬品の人事の先輩が「海を見たことがない人に、海は広いと言ってもわからない。グローバルを経験したことのない人に、グローバルは違うと言ってもわからない」と語っていました。私は妙に納得してしまいましたが、それでも何か伝えることはできるのではないかと思い、本連載をスタートしました。

 グローバル人事だけでなく、日本の人事に携わる皆さまにも、何か一つでもお役に立てたならば本望です。

 
今回のポイント
1 CoEが世界で通用するレーシングカーを作る
2 社外労働市場を見ている報酬、EVPは企業の従業員へのコミットメント
3 狙いを明確にし、シンプルに伝える
4 魔法のタレントレビュー