グローバルシナジーにおける課題

 日本企業が海外進出する際、多くの場合は事業、つまり販売拠点から築いていきます。海外進出が成功し、事業進出する国や地域が増えて各拠点での組織が充実すると、企業のグローバル展開が拡大し、研究開発や生産、管理部門などの機能も海外に進出していきます。これらの部門はグローバルに連携することにより、シナジーを生む部門や機能が多くあり、連携を深めていきます(下の図を参照)。

 グローバルで連携が進むと様々な課題も出てきます。例えば人員管理です。武田薬品工業では、グローバルに適正な人数に人員を管理するため、「適正人員」プロジェクトのグローバル展開を試みましたが、次から次へと予想もしないことが起こりました。

 本社人事から海外子会社の人事に人員数の報告を求めた時のことでした。子会社から届いた人員数に「FTE 50.6」のように1以下の小数があったのです。FTEはフルタイム当量(Full-Time Equivalent)のことで、短時間勤務の従業員の仕事をフルタイム勤務の何人分に相当するかを表したものです。グローバルでは一般的でしたが、当時の日本ではあまり知られていませんでした。

 さらに社員呼称の英訳でも混乱しました。当時、武田薬品では契約社員を「contract employee」と訳していたのですが、米国では「contract employee」は、日本でいう派遣社員のように、自社との雇用関係のない従業員のことを意味します。そのため、誤解をされないよう契約社員を「fixed term employee」、つまり有期雇用社員としました。私は、この辺りから日本の人事は世界とは違うことをしていると思うようになります。

 海外の人事との連携が進むと人事制度についても、初めて聞く言葉がいくつも出てきます。「ファントムストック」という言葉をご存知でしょうか。ファントムには幽霊のようなとか、架空のという意味があり、ファントムストックとは、株式は渡さず株価に連動させた報酬制度のことです。海外の従業員に日本企業の株式を実際に渡すのは極めて困難なため、株式保有と同等のメリットが海外従業員にも与えられるようにしたキャッシュの報酬制度です。

 株式報酬制度がある海外の会社を買収した場合、ファントムストックを導入することがありますが、株価が上昇すると報酬としてキャッシュが出ていくため、そのようなリスクも理解しておく必要があります。

 人事のグローバル化において分からないことはたくさんでてきますので、その都度正しく理解することは重要です。