ソリッドマネジャーとドッティドマネジャー

 グローバル化の進展によって、海外に拠点を持つようになった研究開発や生産などの部門は全社的な視点で業務を推進し、グローバルで一体化したマネジメントが求められるようになります。同様のことが管理部門でも発生します。管理部門は戦略達成のためにビジネスをサポートしますので、事業部や部門のグローバル展開に応じて、組織を変えていきます。

 海外にいくつもの拠点を持つ研究本部長が「国ごとに評価制度が異なっていて誰が優秀なのかわからないから、評価制度を統一してくれ」と、人事に頼んでくるかもしれません。これは言われるまでもなく対応すべき課題です。会社のグローバル化がこのレベルまで進むと、人事などの管理部門も様々なグローバル課題に対応するため、グローバル組織になる必要があります。

 米国に子会社を持つ企業を例に挙げましょう。米国子会社の人事部長は、米国の社長に加えて、本社の人事部長にもリポートを提出するというシステムになっています。2人の上司を持つ組織――デュアルリポートのマトリックス組織です。

 子会社の人事部長は、本社人事部長の部下としてグローバル人事課題に取り組むとともに、米国事業を人事面でサポートします。これは2つの異なった業務を遂行するのではなく、米国の事情をグローバルな人事施策に反映させ、グローバル人事戦略に沿って米国事業をサポートするという、グローバルとローカルを融合した人事を推進し、グローバル化によるシナジー効果を発揮していく役割を果たします。

 マトリックス組織で重要なのは上司の役割です。複数(通常2人)の上司を持つ場合は、1人の上司をソリッドマネジャー(solid manager:実線)、それ以外の上司をドッティドマネジャー(dotted manager:破線)とし、上司同士でコミュニケーションをとって業務を推進します。2人が合意できない時は、ソリッドマネジャーが最終決定権を持ちます。 部下に対する目標設定と評価に関しても、双方の上司が話し合って決めますが、意見が分かれた時はソリッドマネジャーが最終決定します。人件費を含めた予算についてもソリッドマネジャーが責任を持ちます。

 管理部門において、本社部長と海外子会社社長のどちらをソリッドマネジャーにするかは会社の戦略によって決まります。例えば人事において、グローバルに人事制度、人事施策を統一して生産性の高い会社を目指すならば、本社人事部長がソリッドマネジャーになりますし、各地域の事業のサポートを重視するなら、海外子会社社長がソリッドマネジャーになります。

 上司が2人というマトリックス組織は、2人の上司の緊密な連携が必須で、やや高度なマネジメント能力が求められますが、グローバル化が進んだ企業のガバナンスでは、部門間の連携が欠かせないことを反映しています。

 次回は、グローバル組織の落とし穴について見ていきます。

今回のポイント
1 組織は戦略に従う
2 黒子になっても黒幕になるな
3 グローバルシナジー
4 マトリックス組織におけるソリッドマネジャーとドッティドマネジャー