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 前回(詳細はこちら)はグローバル化の段階に応じたガバナンスモデルについてお話をしましたが、組織構造が整っていてもうまく機能しないことがあります。組織は機能しなければ意味がありません。今回は日本企業が陥りやすい組織運営の落とし穴についてお話をします。

 人事運営におけるタイトルの上下関係は、同じ組織内においては明快ですが、会社が違うとタイトルの構成が分かりにくいこともあります。転職をしないのであれば他社とのタイトル比較は意識しませんが、転職をするときはポジションが上がるのか下がるのか、気になるものです。

 転職の多い海外では分かりやすさが重要となり、「Vice President」「Director」「Manager」が一般的で、さらに「Senior Director」「Associate Director」のように「Senior」「Associate」「Assistant」をつけてタイトルの数を増やします。

 分かりやすいということは、関心が高く気にしているということでもあります。日本の会社が海外展開する際に、タイトルに対する日本と海外の認識の違いに留意する必要があります。相互認識のズレなどから、思わぬところで問題となることがあります。

 私が武田薬品工業に入社した2007年頃、経営職のタイトルの構成は「部長」「シニアマネジャー」「主席部員」でした。シニアマネジャーのポジションの重みは海外ではSenior Directorに相当していましたが、英語のタイトルは日本語をそのままSenior Managerとしていました。従って、主席部員の英語タイトルはManagerとなり、当時の私のタイトルもManagerでした。

 企業買収の交渉で人事チームのリーダーとして、米国の交渉先の人事と会合を開いたときのことです。初日は人事のトップであるVice President(VP)が出てきて非常に有意義な交渉ができたのですが、翌日からはVPは欠席。代わりにManagerが来たのですが、担っている権限が少なく権限移譲もされていなかったので全く話になりませんでした。

 なぜVPは来ずManagerが来たかというと、私のタイトルがManagerだったからです。武田がManagerを寄こすならこちらもManagerで、ということです。同様の問題が他にも表出したことから、後に解決策として日本のタイトルが米国の何に値するか、タイトルの翻訳リストを作成して認識のズレを解消しました。

 対社外だけでなく、社内にも思わぬ落とし穴はあります。日本と米国でプロジェクトチームを立ち上げたときでした。どちらの国のメンバーも役割はほぼ同じでしたが、タイトルは日本がAssociate Directorで、米国はDirectorでした。

 プロジェクトが始まると、米国のメンバーは自分たちが上だと判断し、米国だけで検討をした後、ある程度まとまった段階で日本に連絡するような進め方をしました。日本のメンバーはそれに抗議しましたが、米国のメンバーは、なぜAssociate Directorからそのような抗議を受けるのか理解ができないようでした。その後に話し合って誤解が解け、プロジェクトは順調に進むようになりました。

 これらの事例からの教訓は、タイトルに対する理解は日本と海外では乖離(かいり)があり、グローバル組織を適切に作っても、タイトルに関する理解がグローバル水準でなければ組織はうまく動かないということです。

 では、タイトルをグローバルで統一すればいいのかというと、これもなかなか困難です。子会社の社長はPresidentでも、ポジションの重み、職務等級(job grade)は子会社の規模で異なります。マーケティングのヘッドのタイトルは、その国の市場や売り上げ規模が小さくてもVice Presidentにしなくては人材獲得競争で負けてしまいます。オススメは、職務等級をグローバルで統一すること。社内の位置づけが明確になることで、各国でのタイトルのばらつきを吸収することができます。