“配属先”の日本と“リポートライン”の海外

 「藤間、これはいったいどういうことなんだ。人事異動に関してどうしてこんなに冷たいんだ。私は嫌だ」。私がバイエルメディカルにいた頃、人事異動の発表リストを見て米国人の社長から言われた言葉です。

 日本では人事異動の際、人事部が一覧表で発表することが一般的で、その内容で伝えられるのは“配属先”になります。しかし、海外は違います。異動するのはあくまでも“人同士”。迎え入れる部下に対して、これからの役割とリポートラインについてのアナウンスを出すのは、新しい上司なのです。

 例えば、人事部長の直属の部下として報酬に関するリーダーであるAが異動してくる際には、「A will be responsible for total rewards and direct report to me(Aは私の直属の部下で報酬を担当する)」のように、上司である人事部長がAに対してじかにアナウンスをする、という具合です。

 前述した米国人の社長が言わんとしたのは、「人事異動とは人が動くことなのだから、そうした意識が大切である。1枚のリストで発表するのではなく、新しく上司と部下になる人同士、もっと気持ちを伝えるものではないか」ということでした。

 こうしたことに、日本と海外の組織の認識の違いがよく表れています。日本は“配属先”という組織の一員を意識し、海外は誰が上司(誰の指示に従うか)という“人”を意識しています。

 野球に例えるならば、日本は組織の一員つまりチームとして成果を上げる意識が強いので、上司が明確な指示を出さなくてもチームワークで三遊間のゴロを取りながら業務を推進します。一方、海外の組織は三遊間にゴロが来る確率が高ければ、上司がチーム員の仕事を三遊間にシフトするよう指示して業務を推進します。上司がチームの一人ひとりに明確に指示を出し、チーム員はその指示をしっかりと達成していくのです。

 同じ組織図でも日本は配属先である箱(部署)を見て、海外では誰にリポートするかというリポートラインを見ています。

 海外では定期異動はありませんから、人が異動する際には、上司と部下の間に明確な理由が生じます。また、採用は基本的に部門採用ですから、どの部門の誰の下で働くのかがはっきりしています。従って、「何だか分からないけど、チーム編成上こうなった」とか「人事部の意向なので受け入れざるを得ない」といった曖昧なことは起こらないのです。

 「日本には日本のやり方がある」と言う方がいらっしゃるかもしれませんが、これはどちらがいいという問題ではなく、グローバル化し海外のメンバーと仕事をする際に、相手の仕事の進め方の常識を理解する必要があるということです。

 日本のやり方に自社の強みがあり、それを戦略として推進する場合は、それが海外の常識とは違うことを理解した上で、海外の従業員に説明し理解してもらわなければなりません。ただ、理解してもらっても、「このやり方や風土は自分には合わない」と退職する従業員が出るリスクがないとはいえませんが…。