マトリックス組織の要であるデュアルリポート

 前回、マトリックス組織では2人の上司を持つデュアルリポートの組織が発生する話をしました。ソリッドマネジャー(solid manager:実線)とドッティドマネジャー(dotted manager:破線)です。2人の上司には緊密な連携が必須で、コミュニケーションをとって業務を推進していきます。グローバル化が進んだ企業のガバナンスには、部門間の連携が欠かせないことを反映しています。

 2人が合意できない場合は、ソリッドマネジャーが最終決定権を持ちます。ここでもリポートを持つ意味、権限と責任をよく理解しなければなりません。しかし、このデュアルリポートは結構難しく、海外でもうまく機能しないことがあります。

 例えば、ドッティドマネジャーがソリッドマネジャーに任せたままで、上司としての役割を果たさないとか、2人のマネジャーの意見が食い違って合意できない場合に、ドッティドマネジャーが譲らないなどです。これらのケースでは、マネジャー同士のコミュニケーションの取り方に原因があることもありますが、組織構造に問題があることもあります。

 前者のケースでは、そもそもデュアルリポートにする必要があるのかどうかの検証が必要な場合もあります。例えば、サブの上司はほとんど関与していないがビジネスはうまくいっているのであれば、サブへのリポートは不要なのかもしれません。戦略に照らし合わせて組織構造が適切であるかどうか、再検討をするべきでしょう。

 一方、後者のケースでは、譲ることによってドッティドマネジャーが自身の責任を果たせなくなるなどが理由となる場合があります。そのようなときは、どちらの上司がソリッドマネジャーであるべきかを再検証すべきです。場合によっては、ソリッドとドッティドを入れ替えることでうまくいくこともあるかもしれません。

 ある企業がマトリックス組織に移行した際の、HRビジネスパートナー(HRBP)の、本社の人事部長とサポートしている事業部長へのリポートラインについてお話ししましょう。

 HRBPは事業部門に対する戦略的人事アドバイザーですから、本来であれば事業部長がソリッドマネジャーとなり、本社の人事部長はドッティドマネジャーとなるべきです。

 しかし、企業は本社の人事部長をソリッドに、事業部長をドッティドにしました。マトリックス組織に移行したことによる、人事のグローバル化という変化を促進することを目的として、本社人事にリポートラインを持つことをシンボリックに伝えたわけです。このケースでは、経営の意向を事業部長に丁寧に伝えたこともあり、采配はうまくいきました。

 マトリックス組織での2人の上司と部下の関係は親子に例えると分かりやすいでしょう。2人の上司はどちらも親で、両親が仲良くよく話し合っていれば子供は幸せですが、両親の仲が悪く夫婦喧嘩をしていては幸せとはいえません。

 両親の仲がいいのが家庭円満の秘訣であるように、マトリックス組織における2人の上司も仲良く話し合い、お互いの決定権を理解しておくことがビジネスを円満にする秘訣といえるでしょう。各ご家庭において、お父さんとお母さんのどちらが最終決定権を持つかはそれぞれのご家庭におまかせするとして…。

 次回は、グローバルで成功するリーダーについて見ていきます。

今回のポイント
1 タイトルを甘く見てはいけない
2 “配属先”の日本と“リポートライン”の海外
3 リポートを持つことは権限と責任を持つこと
4 ソリッドマネジャーとドッティドマネジャーは両親のようなもの
■修正履歴
4ページ目、上から6~8パラグラフ目の文章の詳細を修正しました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。[2021/1/8 17:00]