(写真:123RF)

 前回の記事で「日本は人事後進国」と言おうとしたところ、編集部の方から「先進国・後進国という言葉を安易に使うのはいかがなものか」と指摘され、ひっこめました。しかし、やはりその思いが消えず、改めて私の意図を説明し、題名に入れてもらいました。

 私は30年間ほどシリコンバレーに住み、3社のCEOを務めました。会社成功には人事が最重要の経営課題と考え、日本の大会社を40歳後半で退職したこともあり、採用、報酬や職務内容の交渉、ボーナスプランの作成、人事評価まで、人事担当者と一緒に行いました。その後、日本に帰国して、日本の会社に勤めている知人の話を聞くたびに、「社員も会社もエキサイティングな新しい試みにチャレンジしなくなってしまった」と思いました。

 私が見るところ、世界が1990年代から情報化時代に突入したにもかかわらず、日本の経営、特に人事戦略や人事の実行は工業化社会のままで進化しておらず、後れを取っている。日本が停滞している根本原因はここにあると考えます。

 とはいえ今後について私は前向きです。日本人は本来、リスクを取ってチャレンジできる国民だからです。明治維新の後、戦後も含めて1980年代までは世界のマーケットを目指してチャレンジしていました。当時は人事も事業の成功のために前向きに対応できていました。

 人事について世界と比較して何をもって進んでいるか、後れているかを決めるのか、と聞かれたら「社員が目の色を変えて仕事に熱中する工夫をこらす、その工夫で競争するのが人事先進国」とお答えします。人事の仕事をしている方にぜひ伺いたい、御社の社員は目の色を変えて仕事に熱中していますか。

 朝、目が覚めたら、自分の仕事をもっとうまく実行するアイデアや工夫を試したくて、早く仕事に取り掛かりたいと思っていますか。勤務時間が来たから昨日の続きを惰性でやろう、ということでは成長もチャレンジもできません。

 社長にとっても社員が目の色を変えて会社の成功に全力をあげてくれることは最優先の経営事項のはずです。どうしたらそうなるかを毎分・毎秒考え、毎朝15分くらいでよいので人事担当者とアイデアを出し合い、トライ&エラーを繰り返し、前に進めていくことが会社成功の必須条件です。

 本連載の題名に掲げた「シリコンバレー人事」とは米国のシリコンバレーで行われている、社員が目の色を変えて仕事に熱中するようにする人事のことです。すべてのやり方が日本で使えるわけではありませんが、役立つ点もたくさんあるはずで、日本企業の方々との対話を通じて探っていきたいと考えています。

 今回の対話の相手はHuman Capital Onlineの読者で質問募集に応えてくださった方々です。Qとあるのは読者の方、Aは私の発言です。