アイデア重視の職場であれば行きたくなる

Q:上から押しつける「働き方改革」ではなく自発的な「働き甲斐開発」をして所属部門の後輩が新しいことに挑戦しやすい雰囲気を作ろうとしています。講演で坂本さんが指摘されていた「アイデアに溢れ、アイデアが生きる活気があるチーム」という姿を常に意識したいです。

A:「朝起きたら会社に行きたくなる」 (To become a company where employees can't wait to go in the morning)。社員にそう思わせる、行動させる環境をつくる、これが経営者や人事部門そして部門長の役割です。

 具体策は沢山あるのですが何よりもまず、新しいアイデアの具体化にチャレンジでき、それが奨励されることが不可欠でしょう。朝起きたら「そうだ、あの件はこうしてみよう」と閃き、すぐ仕事を始めたくなる、そういうエキサイトメントはチャレンジがあってこそ起こります。

 オーナーシップも重要です。「このアイデアに私はチャレンジしたい」と言い出した本人が自分事として取り組む。上司はそれを支援する。失敗も許容する、七転び八起きの文化を作り上げる。人事部門の役割は本当に重要です。

Q:私が見聞きしている範囲ではありますが若い人の気持ちを代弁すると、40代50代の上司や先輩が新しいことに取り組まないし、取り入れない、となります。上司や先輩は景気が良かったときの成功体験を持っていて、だから上にいるわけですが、どうしても自分の経験の範囲でしか判断しないし、語れない。自分が昔やったことを部下にやらせようとする。

 困ったことにそうしたことを無意識に行い、しかも「定年まであと何年は無事に…」と守りに入った自分に気付いていない。ゲームチェンジを認めると、自身の役割を見失い、経験をなぞることが最適解でないと分かってしまうからかもしれませんが。

 別の言い方をすると、新しいことを受け止める器量に乏しく、若手に任せる胆力もない。若手が何か提案しても「お前のやることではない」と言ってしまう。決められたこと、言われたことだけやり続けると若手は段々ふさぎ込みます。

 若い人と話しているとき横断歩道の例えをよく出します。車は来ないし人もほとんどいないのに赤信号が点いているから渡ってはいけないと指示される。ルールは手段のはずなのに守ることが目的になってしまう。信号無視をしろというわけではないですが「目的は何かをよく考えよう」と伝えています。

A:シリコンバレーで信号機は車が来ない限りずっと青になっていますよ。車が来るとセンサーで探知したら赤信号を出す。帰国したとき、ものづくりは日本が進んでいると思っていたのに案外そうではないなあと感じましたね。もちろん道路事情の差はありますが。

 若い人がどんどんアイデアを出して交差点を渡る。経営者やベテランは経験を生かして若い人が大きな事故に遭わないようにする。シリコンバレーに限らず日本においても元気な会社や成功している会社はそうしているし、そうしてきたはずです。

 今でも何かをやってしまえば上司や周囲は応援してくれるのでないですか、違うのかなあ。昔話になってしまいますが私がNECに勤務していたとき、1979年でしたか、パケット交換という新技術を使った製品を作りたいと考え、自分で取り組みました。いったん始めてしまうと上司は後押ししてくれ、「うちの部はこんなことをやっている」と社内で自慢していました。技術のことをあまり分かっていない本社の企画部や人事部もサポートしてくれたことを覚えています。