シニアの知恵より若手のエネルギーに任せる経営

Q:今の若手は結構色々なことを学んだり知ったりしていてアイデアは持っています。ただ「個性が大事」と言われ、育てられてきたせいかどうか、抗う経験をしていない。会社に入ってみると得も言われぬ無言の空気というか、いわゆる同調圧力があるわけですが、それに対してどうしてよいか分からず、大人しくなってしまう人もいます。

A:ベテランになればなるほど新しいアイデアを聞いたとき「それは昔やったことがある」と思ってしまいがちですからね。しかもそう思うこと自体は間違っていなかったりします。

 例えばコンピューティングの世界でいうと集中と分散というトレンドを繰り返しています。クラウドに集中させるのではなくエッジといって処理を分散させようというトレンドに今ありますが30年くらい前にも大型コンピューターの処理をワークステーションに分けようという取り組みがありました。

 ベテランは「一度試して駄目だったアイデアだよ」と口を出したくなるわけですが「面白そうだね。私の経験からすると、ここがちょっと気になるけれどどうしたらいいかな」と言って若手にオーナーシップを持たせ、支援してほしい。昔駄目だったアイデアだとしても若い人は別のやり方で取り組みます。マーケットのタイミングも環境も違いますから、実際にやってみれば繰り返しではありません。

 失敗するかもしれませんが何度かやっているうちに突破口を見つける可能性があります。若い人には何度でも挑戦するエネルギーがあるから。経験を積み、知識を蓄えたベテランであっても何度もやり直すエネルギーでは若手にかないません。

 知恵よりもエネルギーの方が強いし重要です。若手がチャレンジするエネルギーが主体で、シニアの経験と知恵はそれを支援するためのものです。そういう文化をつくることを人事部門がリードしてほしいです。

組織を狩猟型と農耕型に分けてみる

Q:繰り返し失敗する、というところが難しいです。私の勤務先では誤った情報を出すことは厳しく咎められるので、確認を繰り返します。ある会合で鉄道や通信といった社会インフラを担う会社の方と話をする機会があったのですが、遅延なくミスなくやる風土と、試行錯誤をして新しい何かを創り出す機運は相反する、そのすみ分けが悩ましい、と仰っていました。

A:どうしても日本では失敗したら誰かが責任をとる、ということになりがちですね。腹を切る、という発想は米国にありません。そもそも成功確率が低いことにチャレンジしているのだから失敗しても当たり前、というリスク覚悟の経営をしています。

 余談ですが、できる限りのことはするが100パーセントの保証はしないよ、というベストエフォートの仕組みは日本になかなかなじみません。米国でATM(現金自動預け払い機)が止まったり紙幣が出なかったりするのは日常茶飯事です。鉄道が5分10分遅れても誰も文句は言いません。洋服など一般家庭品を買ってきても取り換えに行くのは一般的です。不良品の場合もかなりあります。

 品質を米国並みに落とせ、というつもりはありませんが、もっときめの細かいコントロールが求められるのではないでしょうか。山手線は一分一秒まで正確に運行してもよいでしょうが地方であればそこまでやる必要はおそらくない。

 社会全体の効率を考えた経営をしようということです。99%の品質を99.9%にもっていくには2倍のリソースがかかると言われています。例えば10年前の話ですが太陽光パネルで熱効率を22%から23%にするのに2倍のコストがかかると聞きました。

 一方、中国製のパネルは熱効率が20%、でもコストが半分なのでパネルを2枚並べると日本製の1枚のコストで40%の熱効率を出せる。1枚より2枚の方が故障率も減る。日本の太陽光パネルメーカーが1%の効率向上に研究・開発・製造の力を注いでいる間に中国の会社がマーケットで勝ってしまいました。