前回の本欄の後書きで「使い古された例えかもしれませんがシリコンバレー流は狩猟型、日本流は農耕型と言い換えられそうです」と書きました。中国は狩猟型ですね。

 農耕型の人はベストエフォートやトライアンドエラーを認めません。とはいえこれも前回書いたことですが「高品質のものをしっかり作って仕上げる、動いている製品を確実にメンテナンスする」といった仕事はうまくこなします。

 すみ分けというのはその通りですね。誰もやっていない新しいアイデアの製品やサービスを生み出し、世界に売り込もうとしたら狩猟型にならざるをえません。時間をかけて品質を高めるよりも市場に出して顧客の声を聞いては直していく。自分で全部作るのではなくパートナーを探し「これとあれを組み合わせたら面白いのではないか」と議論して新しい何かを生み出していく。

Q:プロジェクトチームをつくってそこに他部門の人をあえて入れたり、社外を巻き込んだり、そういう取り組みはあるのですがどうしても顔の見える範囲でやりがちです。「あの人はあの部門にいた」とか「その件だったらあの会社に頼もう」とか。前例を探し、倣おうとします。

 そうでなく前例を自ら作る人になりたい。そのためには日頃から異分野に接しておくことが大事だと考えます。新人には「学生時代の友人に定期的に会え」と勧めています。社会人になって3、4年くらい経つと入った会社や選んだ仕事によって経験することがまったく違います。そうした話を互いにするだけでも良い刺激になるはずです。

 私が知っていることがそう大きいわけではないですが、それでも後輩がまだ知らないことが見えていたりしますので、彼ら彼女らに伝えるようにしています。仰る通りで異なるものをつなぐと新しくなる。しかもできるだけ離れているもの、違うものをつないだほうがいい。

 なので「引き出しを増やそう」とも言っています。情報でも人でも、ある時パッと思い出せる範囲が広ければ面白い組み合わせができます。マスコミにいるのだから、日々の情報接触は基礎トレーニングだ、ということです。

改革は一人でも始められる

A:使える部品のリサーチは重要です。ハードウエアでもソフトウエアでも世界で一番か二番の部品を組み合わせて本当に世の中にない部品だけを自社開発する時代です。それがスピードで世界に勝って行くための基本です。上司は「世界最先端になる組み合わせを見つけてこい」と若手の背中を押してほしいですね。

 私は今、日本の会社が変わる絶好のチャンスだと思っています。同じ問題意識を持ち、変えようとしている中堅や若手はたくさんいるはずですし、管理職にもいるでしょう。

 自分の部門とそこにいる部下を農耕型と狩猟型に分けて別々のチャレンジをさせてみる。本業とは別の非公式チームを作らせ、1日1時間そこで何かをトライさせる。うまくいったら社内で宣伝する。失敗してもバツを付けない。こうした取り組みを人事部門も経営トップも推奨する。

 「あそこの会社、あるいは、あそこの部で面白いことができるらしい」と社内外で評判になれば、できる人を集められるようになります。シリコンバレーの人々は自慢できる会社に移っていきます。「うちではこんなことをやれる」と知り合いに言いたいので。

 経営トップや管理職を納得させ、行動させるのは人事部門の責任です。人事部門は黒子でもないし縁の下の力持ちでもない、会社の成否を背負って立つ、日向で輝く部門です。ぜひとも輝く人事部門になる脱皮をしてほしいです。

アキオから一言

日本に戻ってからたびたび講演をしています。ありがたいことに私のキャリアに注目して声をかけてくださる主催者がいるからです。聞いてくれた方に感想を聞くと「よいお話でした」と言ってくれるのですがどうも本音は「よいお話でしたがここはシリコンバレーではなく日本なので」ということのようです。もっと具体的に深く知りたい、という相談が講演後にありませんから。私としては従来よりも半歩進んだ経営と人事を一緒に考え、トライして行きたい。今回登場いただいた40代の方は講演で配ったアンケート用紙に感想や質問をぎっしり書いてくれました。問題意識を持ち、新しいことをしたいと考える人は多くの会社にいるはずです。それが日本を変える起点になると信じています。