やる気のある人にとって理想の職場

Q:グーグルに入社した後はどうでしたか。人事関連で印象に残っていることがあれば教えてください。

A:新しいことに挑戦したい、と手を上げたら、しっかりバックアップしてくれました。私はテクニカルライターとして採用されたわけですが、しばらくしてプログラムマネジャーをやってみたいと思いました。あるプロジェクトについて、そのチームの担当者と話し合いながら、計画を立てたり、進行を見て、調整をしたりする職種です。マネジャーといっても日本企業の管理職とは違います。

 プログラムマネジャーをやりたいと申し出たら「それなら資格の認定を受けたほうがいいでしょう」と言われ、スタンフォード大学にあるプログラムマネジャー育成のコースに行かせてもらいました。費用はグーグル持ちです。やる気のある人、新しいことをやりたい人には本当の理想の職場でした。

 テクニカルライターからプログラムマネジャーに職種を変更する際、新規採用と同じように人事に書類を提出し、書類選考と面接を経て、承認してもらいました。

Q:プログラムマネジャーは人の管理というより、プロジェクトを論理的に管理する役割ですね。ソフトウエアの開発でもラインマネジャーの他にプログラムマネジャーを置くことが多い。工程の線表を細かく書いて、日々、あるいは週ごとにアップデートしていく。状況を分析したり改善したりする力、コミュニケーション力、そして学習能力が優れていないと良いプログラムマネジャーにはなれません。

A:私の印象ではプログラムマネジャーは2017年ごろから注目をあびる職種になりました。グーグルでも多くの人がプログラムマネジャーになろうとしていました。なにしろ社内にたくさんのプログラムが走っていましたから。

 グーグル社員は皆、志気が高く、会社のため、チームのために役に立つプログラムをすぐ始めようとします。みんな頑張りすぎて様々なプログラムがあちこちで動き出して時々、いえ、しょっちゅう混乱するほどでしたね。

Q:日本の会社にもやる気のある人、新しいことをやりたい人はいるはずですから、そういう人を後押しする仕組みをぜひ人事部がつくってほしいものです。

筆者
筆者

A:IPLocksにいたとき、日本語化を担当していた私がおそらく一番、日本側にいるエンジニアとやりとりしていたと思います。皆さん、知識はあるし、よく気が付くし、優秀な方ばかりでした。

Q:日本のエンジニアは謙虚というか、自分の力を過小評価しがちですね。英語ができないと思い込んでいるからかもしれませんが。

 IPLocksで日本側にいたエンジニアにシリコンバレーオフィスへ来てもらったことを覚えていますか。1週間もするとシリコンバレー側のエンジニアは彼をリスペクトするようになりました。英語は確かに今一つだったけれども、彼がホワイトボードの前に立って技術的な説明をするのを聞けば「この人はできる」とみんな分かったからです。

 どこの国とは言いませんが、できないこともできる、と堂々とアピールする人たちがいますけれども日本人は正反対ですね。できるのに、よく知っているのに、聞かれるまで黙っていたりする。

A:ちょっと近い話として、国民性なのかどうか、日本の人事評価は厳しいですよね。厳しいというか、できないところ、失敗したことをピックアップして「あなたはまだまだですね」と言う。

 社名は伏せますがシリコンバレーのある会社にいたとき、360度評価をすることになって、私の1年間の評価を米国の同僚や日本法人の社員に頼んだことがあります。すると日本からの評価だけがめちゃくちゃ厳しくてちょっと参りました。日本からの評価が間違っていた、とまでは言いませんが、足りなかったことばかり列挙するのはどうかなあと。

Q:日本の会社もグローバルに人事をしようということで高い年俸を提示して海外の人を雇うようになりました。それはよいのですが減点方式で評価したら優秀な人の力を発揮してもらえないでしょうね。

A:翌年から私は360度評価を日本に頼むのは止めました(笑)。できたこと、挑戦したことを評価してくれ、「良かったよ」と言ってくれるマネジャーのところで働くほうが楽しいです。

アキオから一言

グーグルも若手だけではなくベテランの力を引き出していると須藤さんから聞いてちょっと意外でしたが考えてみれば当然でしょう。日本の会社が若手に高額報酬を提示するようになりつつありますが優秀なベテランにもそうしていただきたい。高額報酬を支払う前提はその人の実力をしっかり評価できること。「減点方式で評価をしたら優秀な人の力を発揮してもらえない」と言いましたが減点方式は評価とは言えません。何度か指摘しました通り、会社として、部門として、「こうしたい」というビジネスプランがあってこそ、そこにどう貢献したのかを評価できます。