(写真:123RF)

 「ジェンダー・エクイティー(性差間の公平)やインクルージョン(多様な人が仕事に参画できること)についてシリコンバレーで30年仕事をされてきた坂本さんと須藤さんのお考えをお聞かせいただけますか」

 Human Capital Onlineの原田編集長から私と須藤由紀子さんにお声がけいただきました。前回記事『人の評価が習慣の米国、ほとんど評価できない日本』では人の評価についてマネジメント側の私、現場のプロフェッショナル側の須藤さん、そして原田編集長の3人で話し合いました。

 今回も3人でエクイティーやインクルージョンについて意見交換をしてみました。本連載でたびたび書いてきましたが私の思いは、日本が元気になる人事施策を打つことが急務であり、そのために日本以外でどう考え何をしているのかを知っておいたほうがよいのでは、ということです。

「女性なのにたいしたもの」といった発言に驚く

原田:米IBMが今年3月、“Women, leadership, and missed opportunities”という調査報告書を発表しました。日本語版は『ジェンダー・インクルージョン施策の危機 善意は必要だが十分ではない』と題されています。

 題名から分かるようにジェンダー・エクイティーが岐路に立っていると警鐘を鳴らしています。例えば「企業の70パーセントはいまだにジェンダー・エクイティーを最優先事項としていない」「女性にとっての上級職への昇進の道が険しくなっている可能性」などが指摘されています。「自社の組織が今後5年間でジェンダー・エクイティーを大きく向上させると予想する回答者は、女性で62%(2019年から9ポイント減)、男性で60%(同7ポイント減)」にとどまったという結果も紹介されています。

 坂本さんは30年間シリコンバレーにいてIT(情報技術)関連の3社のCEOを務め、採用から報酬と職務の交渉、評価まで、人事の仕事もされたと伺っています。日本の状況をどう見ていますか。

坂本:日本に戻ってきて人と会ったりインターネットへの投稿を見ていたりすると「この人は女性なのにたいしたものだ」といった発言に出くわすことがあります。非常に驚きます。

 発言者や投稿者がどこまで自覚されているのか分かりませんが仕事能力、管理能力あるいは経営能力について女性は男性より低いとみているのでしょう。だから力を発揮した女性を見ると「女性なのに頑張っている」という反応になる。

 帰国した当初、そういう発言を見聞きするたびに腹を立てていましたが、ただ怒っていても仕方がない。どう説明したら気付いてもらえるかと考えるようになりました。男性と女性は体格や体力に違いがありますから体を使う仕事が多かった昔は仕事の向き不向きがあったでしょう。しかし今や情報化社会であり、頭脳労働の割合が増え、ほとんどの仕事において体の違いは問題になりません。男女関係なく仕事をして成果を出せる。

 そういう時代になっているにもかかわらず人口の半分を占める女性を活かせない経営をしていると、活かしているライバルに後れを取り、そういう会社が多いようでは後進国へ後退するばかりではないでしょうか。