(写真:123RF)
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 会社におけるポジションが上がるに従って会議への出席が多くなり、そうするうちに会議に出席することで仕事をしている気になってしまった管理職が多い。私はこう見ています。

 30年間シリコンバレーで仕事をして日本へ戻り、気付いたのは日本の管理職、特に部長や課長が実に忙しそうにしていることです。「打ち合わせをしませんか」とお願いすると会う日は1カ月後になったりします。

 当初は大変そうだなあと漠然と思っていたのですが新型コロナウイルスの問題が起き、出社できなくなった管理職たちから「会議がいつものように開けず仕事にならない」というぼやきをたびたび聞き、「ああそうだったのか」と気付きました。

 私はテレワークになり、管理職たちが通勤などから解放されて喜ぶのではないかと思っていました。自分の時間を持ち、管理職本来の仕事、ビジネスプランをじっくり考えて資料にまとめる時間ができるわけですから。

 ところが彼らは会議を開いて部下の顔を見渡さないと仕事をした気がしないようです。つまり多くの管理職は会議に出席して部下たちからの報告で状況を知り、それに対してピンポイント・レッスンを行う。これが主な仕事になってしまっているようです。

 私は現場の担当者と話をする機会があるたびに「おたくのボスは会議に出てきて何をしているのか」と聞くようにしました。「我々の報告を聞いて最後に『目標達成に向けてしっかり考えて動いてほしい』といったように総括します」という答えが目立ちました。

 部下の報告を聞いているだけなら先生の言葉を一生懸命聞いている生徒と同じです。知識は増えるでしょうが私はそれを仕事とは呼びません。部下たちが仕事を上手くやる方法を自分の経験から教えているとしてもピンポイント・レッスンにすぎない。

 仕事とは貢献です。管理職であれば担当している事業や部門について貢献しなければ仕事をしたことになりません。貢献とは「自分はこの事業をこういう風に持っていきたい」という一通りのプランを立て、実行し、プランと実行の差分をレビューしてプランにフィードバックすることです。プランは文書にして上司や部下に見せなければなりません。こうしたPlan-Do-Review-Feedbackループを回すことが管理職にとって最重要の仕事であり、それをこなしてこそ、経営の一翼を担っていると言えるでしょう。

 管理職が経営しておらず貢献もしていない。部下たちは古くさい助言という名の指示を受けるので新しい時代の発想や創造力を活かした仕事ができない。これが社員は世界一流なのに日本の産業界が他国に比較して停滞ないし後退している大きな原因だと考えます。

 Human Capital Onlineの原田編集長に私の問題意識を伝えたところ、「日本の会社で人事を担当している人とシリコンバレーにおける会議のあり方、仕事のやり方について対話してはどうでしょう」と提案いただきました。

 そこで同じくシリコンバレーで30年近く働いてきた須藤由紀子さんも交え、意見交換をしました(参照記事:米グーグルで9年働いた「大阪のおばちゃん」から人事の工夫を聞く)。以下で「人事担当」とあるのは日本のある大会社の人事部門におられる若手の方です。同時に原田編集長の提案で、村田製作所が開発しているNAONAと呼ぶ、対話の質を測る技術を使い、意見交換の様子を分析してみました(参照記事:なぜ「面接の質」を測るのか?―村田製作所(後編))。