日本の人事部は覚悟を決めよう
原田:日本の人事部が今すぐ取り組むべき課題は何でしょうか。「友達をつくれ」という助言がありました。
田路:グローバル人材ということに関して申し上げれば、欧米企業の人事担当役員とかディレクターは博士号を持っている人が結構います。マスターも多い。スタートアップを始める人は高学歴だと言いましたが人事部長もそうですね。経営の基本を理解し、しかも人事のプロとして人材の目利きができる。そうでないといい人を採れないし、場合によっては騙されて駄目な人を入れてしまいかねない。
日本でも坂本さんが言うグローバルの人事競争に参加するには人事の方の力量が問われてくるでしょう。高学歴でないと駄目だとまでは言いませんが相応の知識と見識が求められる。海外の人を採りたいなら当然、英語で面接できますよね、とか。
日本の会社に厳しいことばかり言ってしまいましたが全体を見渡すと私はそれほど先行きを悲観していません。若い人たちの考え方、行動を見ていると期待できますから。ちょっと触れました通りスタートアップを生む環境も相当整ってきました。
ただし伝統のある大きな会社は思案のしどころです。一流と言われる大学を出て、やる気もある若い人はそういう会社にまず行きません。起業したりスタートアップやNPOに入ったりします。あるいは外資系の日本法人に入る。またはまだ知られていない新しい会社に入ります。大会社に入る新人もできる人ほどずっといるつもりはない。3年くらい在籍し職務経歴書に箔を付けて次に行こうと考えます。
人事部の方はこうした学生や若手の変化をとっくに気付いているはずです。はっきり言うと役員に怒られるのでしょうか、玉虫色の姿勢をとっているように見えます。だから外向きの建前と内向きの本音があり、若手社員からダブルスタンダードだと言われてしまう。「そうはいっても現実はこうだ」みたいな話を後からしても若手に通じません。
本気で新規事業を考えろというなら本気で評価し、本気で投資する。「こういうことを専攻したからこういうことをしたい」と採用面接で話した学生に「それはいいね」と伝えて採用したなら、関係ない部門にいきなり配属しては駄目でしょう。
思うような人材を採れない、採ってもすぐ辞める、ということで人事部の方が疲弊している実態は存じています。だからこそ覚悟を決めて、できるところから採用なり評価なり給与なりを変えていく、そのために必要な力を人事部が付ける、それしか道はありません。
坂本:日本の経営者にお会いすると新規事業の創出もグローバル人材の育成も手を打っていると言われます。確かに制度はある。ですがお飾りとまでは言いませんが会社全体にインパクトを与えることにはなっていない。「やっています」と言うだけではなく経営者は実態を調べて人事部と組み、インパクトが出るように再起動する必要があります。