(写真:123RF)
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 「太陽が当たるオフィス(Sun shine office)」。私がシリコンバレーで数社を起業してCEOを務め、通算30年現地で仕事をしていたとき、この言葉が念頭にありました。オフィスは超一流の場所に構えようという意味です。

 太陽が当たるオフィスは優秀な人の採用、パートナー作り、一流の投資家からの資金集め、お客様に向けたマーケティングやセールス、あらゆる場面でプラスに働きます。オフィス代を節約しようなどと考えてはなりません。

 もっとも今ではシリコンバレーのオフィス代は異常なほど高騰しており超一流の場所に入るコストとそれによって得られる利益が釣り合わなくなっているかもしれません。それどころか、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の問題が起き、オフィスは閉鎖され、社員も経営陣も自宅で働くことを余儀なくされてしまいました。

 私はCOVID-19の問題が起きる前に日本へ帰ってきたためシリコンバレーが今どうなっているか体験できていません。そこでシリコンバレーでスタートアップを経営している知り合い3人に現状を尋ねました。

 一方、日本についても実態を知りたいと考え、私的な研究会をされている3人の方に集まってもらい、オンラインで意見交換をしました。お三方は大学院の教員、中小企業診断士、コンサルタントで、社会人学生や顧客などと接して感じたテレワークの影響を語ってくれました。

「パンデミックは世界を縮小させた」

坂本:シリコンバレーのスタートアップ3社の経営者にCOVID-19が仕事に与えた影響を聞きました。まずそれを皆さんにお伝えします。

 あるCEOが「パンデミックは世界を縮小させた」と言っていたことが強く印象に残っています。世界中の友人がオンラインで何かのイベントに参加する。他に気晴らしがないから真剣に参加する。その様子を見て彼は「世界は小さくなった」と感じたそうです。世界が小さくなって良い面もあれば悪い面もあります。3人のCEOの意見を仕事上すぐ目につくところ、目に見えないところに分けてお話します。

 目に見える変化として通勤ラッシュが無くなりました。シリコンバレーで働く人の大半は日本と同様、普通にオフィスへ通勤していました。いや、正確に言うと普通ではありません。朝の通勤時間の道路の混み方は尋常ではなく下手をすると1時間近く動けないこともあります。

 「WFHになって通勤から解放された」と言っていたCEOがいました。WFHは“work from home”の略だそうです。

 ではWFHがうまく行っているのか。これは仕事の内容によるところが大きい。意見を聞いた1社はコンピューターソフトウエアを開発している会社です。エンジニアたちは普段からオンラインのコミュニケーションツールを利用していたこともありWFHにすんなり移行できたと言っていました。私の見るところ、この会社はソフト開発プロセスをきちんと決めておき順をおって作っていく、ウォーターフォール開発と呼ばれるやり方をしていたからWFHへうまく移行できたのでしょう。

 私がシリコンバレーでIT会社を経営していたときソフトウエアについてはアジャイル開発と呼ぶ別のやり方をしていました。毎朝と毎夕、エンジニアが集まってその日の仕事内容や反省点を話し合って仕事を進めます。開発の進み具合やソフトの出来栄えによって臨機応変に開発の順序や役割分担を変えていきます。この方法はWFHになるとなかなかやりにくい。

 今回意見を聞いた別の会社はハードウエア製品を開発しています。といっても実際の社員はソフトウエアのエンジニアが多いです。この会社のCEOは「顧客に対面で説明する機会が減ったうえに製品を評価してもらう活動がやりにくくなって困った」と伝えてきました。

 今までは顧客のオフィスに向けてハードウエアを貸し出し、エンジニアが訪問、顧客の担当者とエンジニアがハードウエアを動かし、所定の性能が出るかどうか確認していましたが顧客もエンジニアもWFHになってしまった。ハードウエアを顧客の自宅に送ると提案し、受け入れてもらえた場合、自宅でテストをする顧客をオンラインでエンジニアが支援するようにしたそうですがどうにも勝手が悪い。