「会社のカルチャーが危険にさらされている」

坂本:次に、WFHの目に見えない影響のほうです。ハードウエア開発会社のCEOが言った「会社のカルチャーが危険にさらされている」という言葉が象徴的でした。

 VR(仮想現実)サービスを開発している会社のCEOは「以前はオフィスに皆がいて、自由に対話し、アイデアを共有していた。WFHになってそれができなくなったことが問題だ」と指摘していました。この会社のサービスは主にエンターテインメント向けなので社員が「こうしたら面白い」「なるほど、さらにこうするともっといい」と次々にアイデアを出すことが重要であったわけですがそれが失われかねない。

 一体感というのか帰属意識というのか、会社のカルチャーを維持できないという意見もありました。ハードウエア開発会社のCEOは「オンラインツールのやり取りはオフィスで通常行われる会話に代わるものではない。仕事の経験を共有できないから」と断言しました。

 米国の人はやりたい仕事のためにたまたまその会社にいるだけで仕事が面白くなくなれば別な会社に移ります。とはいえ会社で仕事をしていてオフィスに自分の机があれば職場に愛着がわきますし、人が集まることで会社のカルチャーを育み、帰属意識が出てきます。それが強いほうが会社としても強い。WFHでそういうカルチャーが薄れてしまいかねません。

 WFHが社員のメンタルに悪影響を与えるという指摘も2社のCEOからありました。「家を出てオフィスに行くことを楽しみにしていた社員はWFHによって強いストレスを受けた」そうです。通勤が無くなり仕事の始めと終わりの区別が付けにくくなったことも関係しています。WFHがきっかけになって退社した社員、うつ病になった社員が出たと言っていました。

 私が知り得たシリコンバレーの現状は以上です。皆さんの感想あるいは意見をお聞かせ願えますか。

テレワークの実施は個人主義の傾向を促す

三藤利雄氏(以下、三藤):私は立命館大学大学院のテクノロジー・マネジメント研究科で教授を務め、社会人学生たちとMOT(技術経営)のテーマを研究してきました。今は立命館のOIC総合研究機構で研究員をしています。

三藤 利雄 氏
三藤 利雄 氏
(写真提供:三藤氏)

 シリコンバレーのCEOの発言を伺って米国も日本もあまり変わらないのだな、と思いました。私が知り得た範囲からの見立てを言いますと日本の超大手は会社の規模を考えるとすんなりテレワークに移行できた。仕事が定型的で役割分担もはっきりしていて一種のウォーターフォール型になっているので切り替えやすかったのでしょう。