テレワークかオフィスかではなく自立・自律しているかどうか

池邉純一氏(以下、池邉):私は大手総合メーカーでソフトウエア開発を手掛けた後、外資系企業に移りました。それから独立し、視座を持続可能な社会の発展に置いた企業経営コンサルタントをしています。

池邉 純一 氏
池邉 純一 氏
(写真提供:池邉氏)

 日本と米国でそれほど変わらないという発言がありましたが、昔も今も、つまりコロナ禍の前も後も物事の本質は変わらないのではないかと見ています。

 まず私の体験をお話しします。ソフトウエア開発の仕事を一通り覚えて自分で動けるようになると望んで複数の開発プロジェクトを掛け持ちしました。午前中ある場所で仕事をして午後は別の場所に移動して働く。午後の仕事を始める前に時間ができると喫茶店に入ってそこでも仕事をしていましたから会社のオフィスには時々しか行きませんでした。

 携帯電話もインターネットも電子メールもなかった時代ですが様々な場所で仕事をこなし同僚とはたまにしか会わなかった。テレワークではありませんが会社以外の場所で働き、色々な人とやり取りするという点でテレワークと似ていました。

 こういうやり方がなぜできたのかと考えてみると、プロジェクトや仕事の目的を明確にして、それを一緒に働く人たちと共有できていたからだと気付きました。あるプロジェクトに参加したらまず目的を確認し、「それなら自分はこういうやり方でこの日までにこういうことをやる」と仕事のやり方を考え、提案する。納得してもらえたら後はひたすら提案通りに仕事をする。目的に向けて最短距離を行くようにしていましたから仕事の生産性は高かったはずです。

 テレワークとオフィスを比較するのはちょっと違うと思っています。テレワークでもオフィスでも、目的を共有し、各自が「私はこうする」と宣言し、やるべきことをやればいい。一人ひとりが自立・自律して仕事をすればテレワークでもオフィスでも成果を出せるはずです。

 ただし、先ほど言われていたアイデアを生み出したり、思ってもいなかった何かが出てきたり、といったことは確かに対面の場でないと難しいかもしれませんね。

坂本:当時はまだアジャイルという言葉はなかったでしょうが、池邉さんたちの仕事のやり方はアジャイル開発そのものですね。それぞれの得意な力を思い切り発揮してもらおうとしたら今も昔もそういうやり方になるということですね。

 ただしアジャイルに仕事をしようとしたらマネジャーあるいはリーダーが優秀でないといけません。短時間のミーティングで「今日はこうしよう」「君の言う通りでいい、頑張ってくれ」と素早く判断しないといけないからです。物事の理解に時間がかかる人、部下が何をしているか詳しく聞きたがる人、こういう人が上に立つとうまくいきません。