社員が生き生き働く会社の姿は日米で似通ってくる

坂本:シリコンバレーのCEOが3人、そして日本の皆さんが3人、それぞれの意見を聞いて、日米で同じところもあれば違うところもあると思いました。日本と米国のカルチャーはやはり違います。

坂本 明男 氏
坂本 明男 氏
(写真提供:坂本氏)

 それでも社員が生き生きと働き、アイデアを出し合い、それを具体化していく、そういう会社の姿は日米で似通っていくのではないかと感じました。米国は個人主義でありながら社員の帰属意識が薄れることを気にしています。会社への帰属意識が強かった日本では良い意味の個人主義、自立と自律へと進みそうです。

 今回のパンデミックを機会としてとらえ、私は日本の会社にもっと強くなってもらいたい。そのためにいくつか思ったことをまとめとして述べてみます。

 まず社内での取り組みとしてテレワークになったことを利用し、発言をきちんと文字にして残すようにしてはどうかと考えます。オンライン会議の議事録を簡単につくるツールがありますし電子メールで送れば文面が残ります。

 言ったこと、決めたことがしっかり記録に残ると分かれば発言の重さを実感できるでしょう。神田さんが指摘された通り、立ち話や飲食の場で根回しをして何かを決めることは止める。我々日本人には協調性があることになっていますが、それは表で議論され、書きものとして残された決定に基づく協調性であるべきです。

池邉:電子メールを使う習慣は相当に浸透していす。ネチケットなんて言葉もありましたし。

坂本:そうかもしれません。私がこの連載で繰り返し主張してきたのは経営者やマネジャーが自分の考えをビジネスプランという文書にまとめて、それを問え、ということでした。テレワークやWFHをきっかけにぜひそうしてほしい。

 一方、社外に向けた取り組み、世界に向けた姿勢についてはちょっと心配です。世界が小さくなったとしてオンラインのソーシャルミーティングに日本人が入っていけるのかどうか。世界の標準語は英語です。日本人は英語への苦手意識があるし、そもそも日本語の会議であってもなかなか発言しない。

三藤:大学院の授業で「今日は英語で」というと日本人の学生は黙ってしまいます。同じアジアでも中国やバングラデシュの学生はよく話します。話しているうちに考えがまとまっていく感じですね。

坂本:そう、とりあえず話を始めてから考えるくらいでないと対話から取り残されます。シリコンバレーで仕事を始めた当初、英語がうまく話せないと言ったら「アキオ、日本人が英語を話すだけでリスペクトされるよ」と言ってくれました。英語の上手い下手を気にするな、ということですね。

 エンジニア同士の場合なら何かを描きながら対話していく手があります。シリコンバレーで経営していた会社に日本人のエンジニアが来たことがありました。英語ができるとはいえないエンジニアでしたが、技術的なことの会議で彼がホワイトボードに絵を描いて説明をしているうちに、米国人のエンジニアたちは「彼はできる」と能力を認めました。話すだけでは難しかったでしょう。テレワークをしながらホワイトボードを共有できるツールを使えばいいのかもしれませんね。池邉さんが言うようにまだまだITでやれることがあるでしょう。

アキオから一言

 1年間、この連載を読んでいただきありがとうございました。会社は人次第です。優秀な人を採用でき、その優秀な人が趣味のごとく目の色を変えて仕事に熱中し、毎日充実感を得られる。そういう会社にできれば成功する確率は上がります。

 これは私の信念であり連載の中で対談をする際の基本でもありました。実際、シリコンバレーの各社は良い人材を獲得し、思い切り働いてもらう工夫で競争しています。会社は未知の未来に向かって進んでいるので、成功の確率を上げる方策を取ることしか本来できません。

 成功確率を高めるために経営者はもちろん、各部門のリーダーがビジネスプランを自分自身の手で書き、上下ならびに横の組織と共有すべきだと私は考えます。ビジネスプランは組織の「力と向かう方向(ベクトル)」を示すものです。各部門のメンバーはビジネスプランに合わせてベクトルの和を最大限にする活動をするのです。

 人事部門にも当然、ビジネスプランが必要です。人事部門のビジョンやミッション、製品、マーケティング、セールス、ファイナンシャルを時系列でどうするかを書いていきます。

 人事部門のビジョンは冒頭で述べた、優秀な社員が趣味のごとく仕事に熱中でき、充実感を得る姿を自分なりの言葉で書いたものになるでしょう。そういう会社にすることがミッションです。

 人事部門の製品は人事施策です。マーケティングとはその施策を社員と経営トップに「これだ!」と受け入れてもらうことです。セールスは施策をトップと社員に実行してもらうことです。ファイナンシャルとは人事部門の活動費用です。活動費用を上回る成果を出さないといけません。

 ビジネスプランはリビング・ドキュメント(生き物)です。毎月、少なくとも四半期ごとに、施策の成果を評価し、フィートバックループを回し、プランを更新していきます。

 1年間にわたり、日米の会社で働いている方、人事部門の方、シリコンバレーの会社のCEOなど多くの方と対話をしてきたのは、人事部門のリーダーがビジネスプランを描くヒントを見つけ、お伝えしたかったからです。人事部門は会社の要です。あなたのビジネスプランで人事部門のベクトルを、さらには会社全体のベクトルを、最大にしてください。