部長が部の成果を部長の名前で報告するのは当然

Q:ビジネスプランを自分で書いたが上司が手柄をもっていく、それは日常茶飯事ですね(笑)。でも僕はまったく気にしていません。自分で何をやったか、それがビジネスパーソンの市場価値ですから。シリコンバレーではどうなのでしょうか。

A:チームにはリーダーとメンバーがいます。チームが成果を出したらそれをリーダーがチーム名とリーダー名で社内外にアピールします。特定のメンバーが成果にとても貢献したとしても、それはチーム全体の成果であり、上司に報告するのもリーダーです。

 リーダーは「こんなに成果を出した」と堂々と説明します。それでも部下のメンバーは手柄をとられたなどとは思いません。むしろ部下は上司に認められたことでハッピーな気持ちになり、上司のベクトルに合わせるよう、より一層頑張るようになります。上司もその部下を益々頼りにするようになります。両者の依存関係が強くなるほど、チームのベクトルの和が大きくなり、強くなります。

 シリコンバレーではリーダーを務めるこうした人が別の会社に移ると、同じチームにいたメンバーも一緒に移ることが結構あります。チームのリーダーが手柄を立てれば、リーダーの市場価値が高くなり、よりよい条件の職場に移りやすくなる。メンバーはリーダーと一緒に行けば自分の将来が開ける。ですからリーダーが成果を誇示することを歓迎するわけです。頼れる上司(あるいは自分を頼る上司)がいれば、一匹狼で生きていくより、人生を成功に向かわせる確率が高くなります。

 あなたはまったく気にしないそうですから安心ですが「手柄をとられた」という人は失礼ながら被害者意識があるのではないでしょうか。部長が部の成果を部長の名前で報告するのは当然です。その成果をものにしたのが部下だったとしても。

 そもそも「「隠すな! (Do not hide!)」という言葉があります。これはシリコンバレーのキーワードの一つです。「自分のアイデア、考え、プラン、クリエーションを他人から隠すな。真似をされたとしても自分はその先を行けばよい」という意味です。アイデアをとった、とられた、というのでなく、一緒にエキサイトメントを共有できるチームを作るほうが大事ということですね。3人寄れば文殊の知恵で、あなた自身も成長のスピードを加速できます。

Q:手柄の話にはいくつかの問題が混じっているのではないでしょうか。まず、たいして実力がない人が管理職としてどんどん出世していくことへの反感。そしていくら良いアイデアを出し、色々やってみても自分がさほど評価されないことへの落胆。これらが合わさって「手柄をとられた」となるのかもしれません。

A:私が日本企業で働いたのはもう40年近くも前ですが、入るのが一番難しい大学の出身で、知識は豊富だけれども意思決定ができない人が上に来ることがありました。そういう人はさらに上へ行きましたね。ただ、手柄をとられたとは思わなかったし、その人に不満も抱きませんでした。見る人はちゃんと見ているはず、私の上のさらに上にいる人が「あそこの部門には坂本がいる」と見ているはずだと胸をはっていました。

 困った上司が来たら、むしろ上司を丸め込んでしまうくらいの度胸がほしいところです。上司だって成果を上げたいのですから「こうしたほうがいい」という指摘を聞いてくれるのではないでしょうか。上司を丸め込むゲームを楽しんでください。あなた自分の力をどんどん伸ばすことができるでしょう。

 仕事ができないくせに人の話を聞かない、よほど困る人が上に来たとしても2年くらいでまた異動するでしょう。「そのうちいなくなる」と割り切ることです。ただし、一目見て、「これは合わない」と感じた場合、じっと待っているのはよくないかもしれません。

 

 「ケミストリー(chemistry)」もシリコンバレーのキーワードです。ケミストリーが合わない人とは仕事をするな、と言ったりします。ケミストリーの合わない職場環境もあります。人の性格を変えることは山を動かすより難しい。ですからケミストリーが合わない人と一緒に何かをしたり、ケミストリーが合わない職場で働いたりすることは無駄です。ケミストリーの合う人たちや職場で楽しくやっていく方が人生にとって有意義です。あなたが持っているもので一番大切なリソースは時間です。一瞬たりとも時間を無駄にしない方が良いと思います。

 「いつまでたっても昇進しない」「自分がさほど評価されない」、こちらについても愚痴っているだけでは何も変わらない。日頃から情報武装をしておき、人事評価の際に強く実績をアピールするか、自分の実力を示す履歴書をまとめて人材会社に市場価値を算定してもらってはどうでしょう。

 いずれにしても「手柄をとられた」と現場を支えている人がぼやくようでは日本企業がぱっとしなくなるのも当然です。前回お話した通り、シリコンバレーでは「社員が目の色を変えて仕事に熱中する仕組みをいかに用意するか」で各社が競っています。「手柄をとられた」と嘆く人が本当に優秀だとしたら、そういう人たちが手柄についてどうのこうのと言わないくらい、一心不乱に働くようになる場を企業は用意しなければなりません。