コロナ禍で働き方が急速に変化する中で、メンタルヘルスに問題を抱える従業員が増えている。「CHO Summit 2020 Winter」(2020年11月30日、12月4日オンライン開催)では、iCAREの中野雄介氏が、社内に眠っている健康データを分析することによって、手応えのある健康経営を実践する秘訣を披露した。(取材・文=日経BP 総合研究所 ライター 吉川 和宏、撮影=川田 雅宏)
iCARE 取締役CRO 中野 雄介 氏

コロナ禍でメンタルヘルスの問題が急浮上

 人事担当者や産業医、保健師に向けて健康管理システムを提供している同社は、システムを通して従業員から寄せられた健康相談を集計している。この結果、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が拡大する前(2019年11月~2020年1月)と後(2020年2月~4月)を比較して、相談件数の増加率が圧倒的に大きかったのが「メンタルヘルス・ストレス関連」だという。

 テレワーク環境における孤独感の解消やうつ病の防止のために、多くの企業がオンライン相談窓口を設けたり、オンライン朝会を実施したりするなど、他者と交流する機会を増してメンタル不調を防ごうとしているが、中野氏は「メンタルヘルス対策に関して多くの企業が認識を誤っています」と指摘する。「メンタル不調を完全になくすことは不可能で、火災と同様に火種をいち早く見つけて素早く消火するような環境づくりが必要です」と強調する。この環境づくりの健康データとして活用できるのが、大半の企業が定期的に実施している「ストレスチェック」の分析結果だという。

 分析結果の推移を追っていくことで、個人や部署単位の異変を察知できるようになる。例えば、最初は良好だった項目が全体的に悪化しているような部署があれば、その部署内で異変が起きている可能性が高いと判断できる。睡眠に関する回答と生産性に関する回答をクロス分析すれば、特定の属性を持ったグループ(性別や年代、部署など)で「睡眠障害が原因で仕事の生産性に支障が出ている」といった状況が浮かび上がる。ストレスチェックの推移と内容の詳細を分析していくことで、メンタル不調および生産性低下につながる原因が把握できるのだ。

頻繁なストレスチェックで火種をいち早く察知

 年に1度という頻度でストレスチェックを実施している企業が多いが、中野氏はストレス状況が変わり得る3カ月に1度を推奨しているという。頻度を高めることで、メンタル不調の火種をいち早く察知して素早く消火することが可能になるからだ。

 3カ月に1度というと、これを担う人事部門の作業負担が大きくなると思われるかもしれないが、同社が提供するクラウド型の健康管理システム「Carely(ケアリィ)」を活用すれば、一連のメンタルヘルス対策を低コストで簡単に実施できるようになるという。

 Carelyは、人事が抱える煩雑で複雑な健康管理に関する機能を統合的に提供するクラウドサービス。健康診断結果やストレスチェック結果、長時間労働結果、産業医面談結果など、現状で紙や表計算ソフトのデータとして散在しているデータを一元的に管理する。労務リスクのある従業員を自動的に抽出する、あるいは異常のある部署をランキング形式で表示するといったように、対個人・対部署の両面でいち早く異変を察知できる。

 問題の解消を支援する機能も備えている。同社や提携先のスタッフがオンラインで健康指導を行ったり、運動・睡眠・メンタルヘルスの領域で外部の専門サービスにつないだりすることも可能だ。

 経済産業省の「健康経営銘柄2021」および「健康経営優良法人2021(大規模法人部門)」の認定要件を満たしており、健康経営全般を網羅できるようになるという。第5回HRテクノロジー大賞(主催・「HRテクノロジー大賞」実行委員会、後援・経済産業省など)で「健康経営大賞」も受賞。Carelyを導入しているJFE商事は、2019年まで3年連続で「健康経営優良法人」を取得している。