ウィズコロナ時代には、働き方が多様化するのに伴って、人材育成・研修にも大きな変化が求められている。「CHO Summit 2020 Winter」(2020年11月30日、12月4日オンライン開催)では、ベネッセコーポレーションの飯田智紀氏が、同社が提供するオンライン学習ツール「Udemy」の活用事例を交えて、自律学習を促す企業文化・風土を醸成する秘訣を披露した。(取材・文=加納 美紀、撮影=川田 雅宏)
ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部長(Udemy事業責任者) 飯田 智紀 氏
ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部長(Udemy事業責任者) 飯田 智紀 氏

新しい価値を創出できる人材育成が焦点

 コロナ禍によって、様々な側面でリアルからオンラインへの移行が一気に進んでいる。こうした取り組みの基盤となっているデジタルトランスフォーメーション(DX)は、データとデジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデル、そして業務や組織、プロセス、企業風土、企業文化などあらゆるものを変革する役割を担う。飯田氏は「DXには『デジタリゼーション(アナログをデジタルに変える)』と『デジタライゼーション(新たな価値を創出する)』という2つのフェーズがあり、後者は全ての職種に関わるような大変革になります」と断言する。

 DX推進にはエンジニア職やデータサイエンティストが不可欠だが、これからの時代はデジタル化されたものから新たな価値をデザインする「DXビジネスデザイナー」も必要だと、飯田氏は指摘する。同氏は、DXビジネスデザイナーに求められるスキルやマインドを(1)テクノロジーを使いこなす力、(2)イノベーションを発想する力、(3)イノベーションを形にする力やマインドセット――の3つだと分析する。DXビジネスデザイナーになるためには「スキルアップ(これまでの経験や技術を磨く)」ではなく「リスキル(新たなスキルを習得する)」が必要だと説く。

 現在は、新型コロナの影響でリモートワーク化が進み、DXや業務の自動化がさらに加速している。2025年までに8500万の仕事がなくなり、新たに9700万の仕事が生まれるともいわれており、リスキルは世界的なトレンドだといえる。

オンライン学習の活用でリスキルが可能に

 ラーニング・カルチャーを実現するためには「スキル定義・仕組み化・文化の醸成」が必要で、それを下支えするコンテンツや学習履歴データなどのインフラも重要だ。しかし、これらがそろっていても日本では海外に比べて自己研鑽(けんさん)の比率が低く、「およそ2人に1人は何もしていない」(飯田氏)のが現状だ。オンラインの学習環境を整備すれば、働き方や雇用の多様化や流動化・複線化にもつなげられるが、自律型学習者は組織の中で6%程度だという。

 これまでは6%の壁をなかなか超えられなかったが、飯田氏は「コロナ禍でオンライン学習の環境整備が加速し、人々のマインドに変化が生まれ始めています」と語る。外部環境の変化によってリスキルを実施する機運が日本でも高まっている今は、自律型人材育成を強化する好機だといえる。

 自律型人材を育成・支援するオンライン学習ツール「Udemy for Business」は2010年に米国で生まれたもので、現在は190の国・地域の60言語以上でサービスを展開している。5万3000人の講師が学習コンテンツを提供し、3500万人が学ぶ広大な動画学習プラットフォームとなっている。このサービスを提供している米ユーデミーとベネッセコーポレーションが提携し、2015年から日本でもサービスの提供を開始した。

 当初は個人を対象にしていたが、2019年6月から法人向けに「5000講座受け放題」のサブスクリプション形式のサービスを提供。「Python」などのプログラミング言語やパブリック・クラウド・サービスといった最新技術のスキルを先取りして学べるほか、ビジネスコンテンツも充実している。現在は国内250社で採択され、働き方改革・生産性改善、DX推進のためのDX人材育成、自律型人材育成や風土改革、内定者・新人研修、ダイバーシティ推進など、あらゆる場面で活用されているという。

 飯田氏は「人事・研修担当者に求められるのは、環境整備と同時に周知する“ラーニングマーケター”の役割なので、マーケターとしてUdemyのサービスをうまく活用して自律的に学習に取り組む社内風土を醸成してほしいと考えています」と語る。最後に「ベネッセは、学び続ける全ての組織と人材を応援していきます」と力強く語って、講演を締めくくった。