コロナ禍の打撃は、HRトレンドを激変させ、人や組織の在り方にも多大なる影響を与えている。「CHO Summit 2020 Winter」(2020年11月30日、12月4日オンライン開催)では、MyReferの鈴木貴史氏が、新時代のHR戦略とされる「リファラル採用」とインターナルモビリティを通じて、これからの人事戦略の在り方を解説した。(取材・文=浅井 美江、撮影=川田 雅宏)
MyRefer 代表取締役社長 CEO 鈴木 貴史 氏
MyRefer 代表取締役社長 CEO 鈴木 貴史 氏

HRの課題を解決に導く2つの手法

 自社の社員に友人や知人を紹介してもらう「リファラル採用」を中心としたクラウドサービスを展開している同社は、2018年に設立。順調に業績を伸長し、現在は大手企業を中心に全国の600社超、25万人の社員に利用されている。

 コロナ禍により、リモートワークや在宅勤務などが広がり、社員間コミュニケーションの減少や遠隔マネジメントの機会が増加している。これに加えて、日本特有の「人に仕事をつける」メンバーシップ型から、「仕事に人をつける」ジョブ型への移行のニーズも高まっている。これらの現象から、エンゲージメントの低下や離職増加など、企業はこれまでとは抜本的に異なるHRの課題に直面している。鈴木氏は「組織と個人の関係性がよりドライなものになる中、一人ひとりに生産性の向上が求められています。これはコロナショックがもたらした課題の特徴といえるでしょう」と説明する。

 こうした課題の解決策として、同氏が提唱するのが内部政策としてのインターナルモビリティと、外部政策としてのリファラル採用だ。インターナルモビリティとは、会社からの指示ではなく、社員自身の希望を取り入れながら最適配置を行う人事異動制度。社内公募制度やFA制度によって既存社員を最適配置し、エンゲージメントの向上を実現する。離職防止や採用に関するコストの削減、次世代リーダーの創出などメリットは多い。ただ、制度設計や認知浸透など課題も多く、関係各部との調整に時間がかかるのも事実だ。

採用コスト削減と離職率減少を叶えるリファラル採用

 「これを解決するには、リファラル採用から取り組むことです」と鈴木氏。社内外の信頼できる人脈を介した採用活動であるリファラル採用は、新時代に適用した新たなHR手法として急成長。企業のリファラル採用の実施状況は、2015年の10%から2020年には63%まで大きく伸長しているという。

 社員全員が自社のジョブディスクリプションを見て求人を認知し、友人や知人に自社の仕事を伝えるリファラル採用は、社員が自然に自社のポストを考える機会につながるという。リファラル採用で友人に紹介するフローを、インターナルモビリティでは自らが応募するというフローに置き換えるだけなので、人事部門と社員の双方のハードルが低くなるというわけだ。「社員数1000人規模のある企業は、リファラル採用によって約4800万円の採用コストを削減するとともに、離職率が3分の1になりました」と鈴木氏は語る。

 リファラル採用は仕組み化するまでに約3カ月を要するが、いったん構築されると、自然と決定が生み出せて現場のエンゲージメントが高まっていくという。また、社員に対して会社の文化やビジョンが浸透するという効果も期待できる。ちなみにメルカリやグーグルなど、急成長を遂げた企業の4~5割がリファラル採用を導入しているという。鈴木氏曰く「大手企業の場合、今リファラル採用に力を入れるかどうかで、将来的な採用費用で1億~2億円、そして離職率にも大きな格差が生まれます」。

 最後に、鈴木氏は同社が提供するサービス「MyRefer」を紹介。リファラル採用を実現するクラウド型のサービスで、人事クラウドと社員向けアプリを使って継続的に友人を紹介できることが大きな特徴だ。登録されているリクルーター数は25万人を突破。人事工数をかけずに動機付けから制度設計、管理、分析までを一気通貫で支援する。専任パートナーが会社に合わせて構築するコンサルサポートも備えている。

 ニューノーマルの時代に適応した2つの新しい手法、リファラル採用とインターナルモビリティ。企業のエンゲージメント意識を高め、強固な組織を築く力強いツールになりそうだ。