変化の激しい社会の中で組織力向上は全ての企業にとって喫緊の課題となっている。「CHO Summit 2020 Winter」(2020年11月30日、12月4日オンライン開催)では、NewsPicksの麻生要一氏が組織力を高めて不確実な社会で勝ち抜くためのコミュニティ作りの秘訣を紹介した。(取材・文=加納 美紀、撮影=川田 雅宏)
ニューズピックス NewsPicks for Business 執行役員 麻生 要一 氏

不確実な社会を生き抜くには察知力と対応力が重要

 人事の世界では「パーパス経営」「タレントマネジメント」「DX人材」「eNPS (エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」「ジョブ型雇用」といった新しい考え方や施策が次々に生まれている。麻生氏は「その背景にあるのは社会の不確実性。『VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)』という言葉を聞かない日はないほどで、複雑で曖昧な時代で変化が激しい環境下で企業経営の進化が求められています」と指摘する。

 今や、自社の競合は同業他社とは限らない。アマゾン・ドットコムが銀行を始め、ソニーが車、トヨタが街、フェイスブックがVR(仮想現実)デバイスを作る時代になり、競合の垣根は破壊されつつある。麻生氏は「どの異産業から敵が攻めてくるか分からないため、防衛線が張れずに自社が打って出るべき領域が見極められないのが現実です」と語る。一寸先は闇ともいえる時代になったのだ。

 さらにすさまじい技術革新が進み、5G、自動運転、AI(人工知能)、量子コンピューター、ブロックチェーン、VRといった技術が社会実装に入る段階となった。「これらのテクノロジーが社会やビジネスの場に浸透したときに、企業や社会にどんな変化が起きるのかは未知数。企業には加速度的な変化をいち早く察知する力、そしてその未来に対応する力が求められています」と麻生氏は力をこめる。

 そうした社会の変化に対応すべく「自律的に動ける人材の育成」「ジョブ型雇用に対応する仕組み作り」「新規事業ソースができる組織作りやソフト作り」といったミッションに取り組んでいる人事担当者は多い。しかし、従業員の士気の低下や中間管理職のスキル不足、コロナ禍で通常の研修すらできないなど、企業が抱える課題は多い。麻生氏は「これらの課題を一つずつつぶしても対症療法に過ぎません。根本的な風土や仕組み、自律的に動ける人材の育成など、会社全体の変革が必要です」と説明する。

建設的な議論の場を提供して変革の風土を醸成

 経営層も人事も現場社員も自社の変革を望んでいるにもかかわらず、会社全体になると失速してしまうのはなぜか。経営者は「チャレンジを推奨しているのに従業員は無関心だ」と言い、現場社員は「新しいこと提案したが却下された」と言う。麻生氏は、そうした齟齬(そご)は「役職や階層による縦の分断」「部署による横の分断」という2方向でのすれ違いが原因だと分析する。

 「そこで、フラットな場に立ち同じ視点・視界で対話するコミュニティを作ることが重要です」と麻生氏は断言する。経営者と現場の意見交換の場を設けたり、社内SNSやオンラインコミュニティを構築したりする会社は増えているが、それだけではサイロ化は打破されない。場を作るだけでなく適切なテーマを提示し、盛り上がるための仕掛けが必要になる。

 麻生氏が勧めるのは「外向きの未来」の話題を提示することだ。例えば「来期の事業戦略」を話題にすると経営者が有利になるが「自社の30年後のあり方」「GAFAが自社業界に参入したらどう防衛するか」といった話題なら経営者も新入社員も同じ情報量と視点で話ができる。個々のマインドと会社の方向性が同じベクトルとなり、建設的な議論が生まれたり組織全体がよい方向に進化したりする動きが生まれる。

 さらに場を盛り上げるためには、ニュースを話題にするのもポイントだという。こうした場として役立つのが、ニューズピックスが提供している「ニューズピックスエンタープライズ」だ。「各企業の社員だけが使える議論空間の中で、ニュースをきっかけとして未来に向けた議論を展開してもらっています」(麻生氏)。さらに書籍情報、eラーニングによる講座などを集約することで、建設的なコメントが上がってくるプラットフォームとなっている。「こうした場を作ることで変革への挑戦が生まれやすくなり、変革の風土が醸成されます」と麻生氏は力強く語った。