人材の捉え方は「コスト」から「最も大事な投資対象」に変化
在宅勤務やオンライン化が進み、対面コミュニケーションの機会が減り、組織と個人の関係などが変化することに危機感を抱いている企業は少なくない。そこで注目を集めているのがエンゲージメントだ。「個人と企業が一体となり、共に成長する関係」をどう構築していくか。働く個が自走していくためにどのように支援していくのか。職場のリーダーがエンゲージメントの重要性を認識し、チームの情熱に火を付けてもらうためにはどうするか――。ロート製薬の取締役髙倉千春氏と三井住友銀行人事部上席推進役を務める樋口知比呂氏が議論した。
リモートで登壇した髙倉氏は「この20~30年で人材の捉え方は大きく変わってきた」と指摘。1980年代には「コスト」という捉え方で、人事部にとっては「総人件費の適正化」が課題となっていた。1990年代の半ばには「アセット」に変わり、課題も「人財投資に対するROI(投下資本利益率)の最大化」に変わる。そして現在は「最も大事な投資対象」となり、競争優位性の源泉になっていると説明する。だからこそ、人事部にとって社員のエンゲージメントを高めることが重要な課題となっているのだ。

髙倉氏は「どれだけの人が本当の意味をわかっているか疑問だ」と前置きして、エンゲージメントには(1)Rational(理解度):会社の進む方向性を腹落ちし、それを支持できる、(2)Emotional(共感度):組織や同僚に対して、帰属意識や誇り、愛着の気持ちを持っている、(3)Motivational(行動意欲):組織の成功のために、求められる以上のことを進んでやろうとする意欲――という3つの要素があると解き明かす。エンゲージメントの高まりを一過性のものではなく持続可能なものにするためには、さらに「Energize(健康経営)」「Enable(キャリア支援)」という2つの要素も必要になるという。
一方、エンゲージメントと並び注目を集めているジョブ型の問題について、髙倉氏は「各人の仕事への想いや専門性にもっと重点を置かないと、本当のジョブ型は達成できない」と指摘して、日本の現状に危機感を示した。具体的な施策として、ロート製薬では社員の自発的なチャレンジ支援を行うほか、早くから社内のダブルジョブを認めるなど、個人と企業の関係を進化させることに注力しているという。
この記事は登録会員限定(無料)です。