2020年12月1~3日の3日間、日本経済新聞社・日経BPは「Human Capital 2020」(オンライン・ライブ配信)を開催した。この特別パネルディスカッション「企業価値創造を拡大する『人的資本』経営の最前線」を振り返る。コロナ禍により、社員一人ひとりの能力とケイパビリティが問われるようになった今、人的資本(Human Capital)の向上を目指す人材戦略の重要性が注目されている。従来、オペレーション志向だった日本企業人事は、こうした人材戦略にどう取り組んでいくべきか。2020年9月に経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート」を元に議論が交わされた。モデレーターは日経BP総合研究所 Human Capital Online編集長の原田かおりが務めた。(取材・文=岩辺みどり)

 これからの企業価値創造で「人的資本(Human Capital)」の価値を最大限に引き出すことが不可欠だと打ち出した「人材版伊藤レポート」。パネルディスカッションではレポートをまとめた経済産業省の「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」メンバーが一堂に会した。レポート監修を手掛けた一橋大学CFO教育研究センター長の伊藤邦雄氏をはじめ、日本を代表する企業のCHRO(最高人事責任者)、機関投資家、経済産業省担当者が語り合った。

経営戦略と人材戦略の連動が要になる

 日本企業が目指すべき人材戦略とはどのようなものか。人材戦略と経営戦略を一体化して推進し、その取り組みを社内外に発信していくにはどうすればよいか。まず、伊藤氏が人的資本向上に必要な視点を3つ挙げた。「コーポレート・ガバナンスの文脈で捉える」「持続的企業価値創造の文脈で捉える」「投資家目線の文脈で捉える」ことだ。

一橋大学 CFO教育研究センター長 伊藤邦雄氏

 伊藤氏は「企業の価値の主たる決定因子が有形資産から無形資産に変わった今、持続的な価値向上を実現するには、ビジネスモデルや経営戦略と人材戦略が連動しなければならない」と話す。ガバナンス改革では取締役会は人材のテーマにどう取り組むべきか、さらに投資家目線で捉えた時には人材や人材育成のKPIを何に設定するかという説明が重要となる。しかし、日本企業の多くは効果的な人材マネジメントが実践できておらず「日本の人事部門は管理部門と捉えられ、価値創造部門だと考えられていない」のが現状だ。

 伊藤氏は「経営がイニシアチブを持ち従業員へベクトルを向け、積極的な対話を行っていく必要がある」と変革の方向性を示唆する。従来の人的資源や人材管理といったマネジメント業務ではない。「企業と従業員が相互に依存していた関係は終わり、個の自律、人材の活性化が求められる。企業も個人もお互いに選び、選ばれる関係へと変わっていく時だ」と話す。そのためにトップマネジメント改革を推進し、CEO、CFO、CHROの三者が連携する重要性も強調した。

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