3月19日、国連諮問機関SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が2021年度「世界幸福度報告書(World Happiness Report)」を発表した。世界の約150カ国・地域を対象に幸福度を数値化したランキングによると日本は56位。国内総生産(GDP)をはじめとした経済指標だけでなく、健康寿命や社会的支援、人生の選択自由度なども加味して順位付けしている。これが話題となるのは、コロナ禍で「ウェルビーイング(Well-being:より良く在ること、幸福であること)」への注目が高まっているからだ。企業で取り組むべきウェルビーイングの勘どころとは何か。「CHO Summit 2021 Spring」に登壇する楽天グループ、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの取り組みで探る。

(写真:123RF)

 「コロナ禍が長期化している今、ウェルビーイングについて話を聞きたいという大企業の人事などから問い合わせが増えている」と話すのは、楽天グループの小林正忠常務執行役員CWO(チーフウェルビーイングオフィサー)だ。

 楽天グループでは2019年に国内企業で初めてCWOのポストを設け、同社創業メンバーの一人である小林氏が着任した。以来、小林氏は個人・組織・社会という3つの切り口で同社のウェルビーイング施策をリードする。「個人のウェルビーイング」では、社員の身体的・精神的健康を高める、「組織のウェルビーイング」では社員と会社とのエンゲージメントを強化する、そして「社会のウェルビーイング」では社会の持続可能性を追求し企業価値向上を目的とする。ウェルビーイングという概念によって、サステナブルな社会に必要とされる企業の在り方、組織の在り方、働き方の変革と今後の指針を包括して説明できる。他社が楽天グループの取り組みに注目する理由は、ここにあるだろう。

社員一人ひとりの幸福が経営課題に

 世界保健機関(WHO)が提唱するウェルビーイングの解釈は70年余りたった今も多様で、唯一の定義があるわけではないが、根本的には個人が「より良い」「幸福である」ことを実感できる状態を指す。米イリノイ大学のエド・ディーナー名誉教授らの研究によると、幸福感の高い人はそうでない人と比べて創造性が3倍高く、生産性が1.3倍高いと報告されている。一時的な業績が良くとも社員のウェルビーイングが悪化すると企業の長期的な成長は難しくなる。

 まず、ウェルビーイングを単なるスローガンとして掲げるのでなく、経営課題であると認識することが重要だといえるだろう。楽天グループでは、企業文化醸成の必要性を実感した三木谷浩史会長兼社長が小林氏に直接、「企業文化の再強化」を打診したことがきっかけだった(2020年10月掲載の小林氏インタビュー記事参照)。

 では、経営問題として捉えたウェルビーイングを人事施策でどのように実践していくか。その鍵は、社員が仕事や働き方を自律的に選べる環境を整えることにありそうだ。

 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスではコロナ禍以前の2016年から、働く場所や時間の制限をなくして柔軟な働き方ができる「WAA」(ワー、Work from Anywhere and Anytime)という独自の人事施策を展開してきた。WAAにより多くの社員が「生産性が上がった」「生活が良くなった」「幸福度が上がった」という効果を実感しており、ウェルビーイング向上に大きく寄与している。さらに、2019年にはワーケーションを推進する「地域 de WAA」を、2020年7月には副業やインターンシップで同社にジョインできる「WAAP」(ワープ、Work from Anywhere & Anytime with Parallel careers)をスタートさせた。