KDDIは2020年8月にジョブ型の人事制度を導入するに当たり、「管理職」という概念を変え、「経営基幹職」に切り替えた。マネジメント職だけでなく、専門性の高いエキスパート人材も経営基幹職として遇する。組織の在り方や働き方が大きく変わる中、管理職が担う役割はどう変わるのか。

(写真:123RF)
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 「転職しようとして、エージェントに『あなたは何ができるのですか』と聞かれ『管理職です』としか答えられないような人には仕事が来なくなる」。

 KDDIの白岩徹執行役員コーポレート統括本部人事本部長はこう話す。同社は2020年8月にジョブ型の人事制度を導入するに当たり、「管理職」の概念を変え、「経営基幹職」に切り替えた。部長やグループリーダーなど組織を率いるマネジメント職に加え、専門性の高いエキスパート人材も該当する。マネジメントとエキスパートの役割が違うのはもちろん、同じマネジメント職でも、例えば開発部門と監査部門ではロールモデルは違う。白岩執行役員らは全部門を回って対話し、それぞれのロールモデルをジョブディスクリプション(JD)に落とし込んでいくという。

 ジョブ型を導入するかどうかは別として、管理職の役割を見直す時期が来ている。「管理職と部下は上下の関係で、上司の指示命令に部下が従う」という関係性は変わりつつあり、特に専門性の高い人材が集まる組織ではそれが顕著だ。DX(デジタルトランスフォーメーション)で業務のデジタル化が急速に進む中、デジタル技術を使いこなす若手の発言力が増す。部門横断のプロジェクトが増え、旧来の組織が形骸化していく――。こうした環境のなかで、管理職に求められるものは変わり、KDDIのように「管理」職というネーミングが実態に即さない組織が増えつつあるのではないか。

支社長は立候補制、メンバーのサポートに徹する

 もう10年ほど前だが、管理職にユニークな役割を課していたある外資系の生命保険会社を取材したことがある。

 その会社には多くの支社があり、各支社には数十人から100人を超える営業担当者が所属する。それを束ねる支社長は、上層部からの指名ではなく、本人の「立候補」で決まるのだという。

 支社長の仕事は基本的に支社のメンバーのフォローだ。チーム営業のメンバーを決めたり、伸び悩むメンバーにアドバイスを与えたり、情報共有や受注処理がスムーズに進むようにプロセスの見直しをしたりといった業務に当たる。支社長になるにはプレーヤーとしての実績は問われない。この会社では営業担当者の報酬は歩合制のため、スタープレーヤーはそれこそ青天井の収入が見込め、支社長になってほかのメンバーをバックアップすることにはさして魅力を感じない。むしろ営業成績はさほど華々しくないが、「他人の面倒見がいい」「組織運営に興味がある」といった特性を持つ人が手を挙げることが多いのだと聞いた。

 この会社で支店長と営業担当者の関係は「上下」ではない。芸能事務所のマネジャーが担当タレントをきめ細かくケアし、その価値を高めるといったような関係性だ。支店長は「管理職」というより、人(営業担当者)という経営リソースの有効活用を役割とする「マネジメントの専門職」だ。実際、そのときに取材した支店長は人の育成に興味を持ってコーチングを学んでおり、将来は人材育成の仕事に転じることも考えているようだった。

 「歩合制の営業部隊という特殊な職場だからこそ、こういうやり方が生きるのだろう」と当時は思っていたが、デジタル人材など専門性の高い社員が集まる部門でも応用できるのではないだろうか。高度な専門知識を身に付けた社員が力を発揮できるように、働きやすい環境を整えたり、人間関係などのストレスを緩和できるよう支援したりする。こんな新たな「管理職」の姿も見えてくる。