社員のキャリア自律促進と成長が目的

 ジョブ型雇用に大きく舵を切った企業の一つが、三菱ケミカルだ。2017年の3社(三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨン)の統合を機に、伝統的な素材産業の中でもいち早く職務等級制を採用した。その後、様々な検討を重ねたうえで2020年10月にジョブ型人事制度に刷新、まずは管理職5000人に対するジョブディスクリプション(職務記述書)を作成し、定義した職務への成果で処遇する形にした。2021年4月からは、約1万2000人の一般社員にも同様の制度を適用している。

 同社がジョブ型を採用した理由は明確だ。同社取締役常務執行役員の中田るみ子氏は「制度刷新の背景には、少子高齢化や労働力人口減少などで世の中も社員の価値観も大きく変わってきたことが挙げられる」と指摘する。「会社としてイノベーションを発揮していかないと国際競争に勝っていけない。こうした社会の変化が経営戦略の根幹となり、人事制度改革につながった」(中田氏)

 人事担当として中田氏が重視するのが、社員一人ひとりが自分のキャリアを主体的に考え、オーナーシップを持って業務をやり抜くこと。「これによって会社の生産性も上がっていくことが求められる」と言い切る。

 一方で、ジョブ型を適用する職種としない職種を明確に分けているのがニトリホールディングスだ。ジョブで定義できる職種――情報システム、財務経理、法務などの業務――についてはジョブディスクリプションを作成するが、それ以外の業務では作成しない。

 これには理由がある。同社では3~5年で配置転換を実施し、様々な部署の業務を経験させることで社員を育成する“配転教育”に力を入れているためだ。「ジョブディスクリプションはあってしかるべきだが、これを作成することが目的になってはいけない」と語るのは、同社の理事/組織開発室室長の永島寛之氏だ。「一つのジョブだけを追求させると社員の可能性を狭めてしまう危険性がある。様々な部署でいろいろな業務を経験してもらい、それによって成長してほしい」(永島氏)

 ジョブ型への対応は異なるとはいえ、ニトリと三菱ケミカルに共通するのは社員にキャリアオーナーシップを持たせていることだ。例えば三菱ケミカルでは公募制度を開始し、社員による手挙げを促した。これにより「2020年10月の公募スタート後には、2019年の約2倍の応募があった」(中田氏)。募集と応募のマッチング数を増やすために、上司と部下のキャリアデザイン面談などのコミュニケーションも充実させていく。

 ニトリも「個の成長を促す人事」を標榜する。ニトリグルーブ内での独自な教育体系を「ニトリ大学」と称し、階層別研修、越境学習をはじめとしてグローバルに活躍できるスペシャリスト育成の仕組みを設けている。