聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

2021年3月に第20次中期経営計画を発表、「デジタルサービスの会社」への変革を加速する。カンパニー制の導入、ROIC経営などの推進で一層の企業価値向上を図る。

2021年3月に第20次中期経営計画を発表しました。

山下 良則(やました・よしのり)
リコー 代表取締役 社長執行役員 CEO
1957年兵庫県生まれ。広島大学工学部卒業後、80年リコー入社。フランス工場や中国工場の立ち上げをはじめ英国生産会社の管理部長、米国生産会社の社長を務め、リコーのグローバル化をけん引。総合経営企画室長などを経て、2017年4月より現職。21年4月より経済同友会副代表幹事に就任。(写真:村田 和聡)

山下 良則 氏(以下、敬称略): 本来は20年3月が第20次中計発表のタイミングでした。新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、20年度を「危機対応」と「変革加速」の年と位置づけ、1年ずらして発表したのが今回の中計です。

 経営目標に据えたのは、「“はたらく”の生産性を革新する『デジタルサービスの会社』」です。コロナ禍によって、オフィスでのプリンティング需要は大幅に減少し、リコーの直近の業績は非常に厳しいものとなっています。しかし、逆に言えばオフィスサービスなどその他の事業を成長させる好機でもあります。デジタルサービスの会社への変革を加速したいと考えています。

中計でROIC(投下資本利益率)経営を推進し、企業価値を向上する方針を打ち出しています。どのような問題意識がありましたか。

山下: 企業価値を向上させるには社員、株主、社会などステークホルダーの期待に応え、一つひとつ価値向上を積み重ねていくことが必要です。その際にROICは重要な起点です。投下資本と収益性のバランスが取れていなくては、株主も社員も納得できないでしょう。リコーのようにポートフォリオが複雑な会社は、事業ごとの収益性を捉えるのがなかなか難しい。1年半ほど社内でROIC経営のトライアルを行った上で、導入を決めました。

 こうした企業価値向上に向けた活動の原点は、創業者・市村清の「三愛精神」です。「人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」という創業の精神は、ESGやSDGsに重なるサステナブルな理念です。変わることなく大切にしていきたいと考えています。

■「三愛精神」を原点として社会課題解決に取り組む
出所:リコー
[画像のクリックで拡大表示]

権限委譲で経営にスピード感

21年4月からは社内カンパニー制を導入しました。どんな狙いがありますか。

山下: 狙いは2つあります。1つは徹底的に権限委譲し、各ビジネスユニットがスピード感のある経営を実現することです。もう1つは、経営資源を最適に配分して、資本収益性を向上することです。ビジネスユニットごとにROICに基づいた評価と資源配分を行います。

 現在の複写機ビジネスをお客様ごとにくくり直し、新たに「デジタルサービス」「デジタルプロダクツ」「グラフィックコミュニケーションズ」「インダストリアルソリューションズ」「フューチャーズ」という5つのビジネスユニットをつくりました。それぞれのプレジデントには、とにかくできるだけ早くビジネスを成長させてもらいます。

 グループ本社が担うのは事業ポートフォリオの変革です。各ビジネスユニットの成長性と資本収益性を見て、ヒト・モノ・カネをどう投入するかを検討します。新事業を手掛けるフューチャーズについては、売り上げが一定規模になるまでROICでの評価はしないことにしています。

 第20次中計がスタートし、カンパニー制へと移行する21年4月以降は、新たな創業という意識で取り組んでいきたいと思います。