脱炭素か経営再建か

 世界的に高まる脱炭素の動きは、日本の株主総会にも影響を及ぼしている。環境NGO(非政府組織)が株主となり、企業に脱炭素の取り組みを迫っている。

 21年、環境に関する株主提案を受けたのが、住友商事である。環境NGOのマーケット・フォースが、地球温暖化の国際的な枠組み「パリ協定」の目標に沿った事業計画を策定・開示するよう定款変更を求める株主提案を提出した。

 マーケット・フォースが問題視しているのは、石炭火力発電の建設だ。住友商事は40年代後半に撤退する意向を示しているが、バングラデシュのマタバリ石炭火力発電所の拡張については「例外」としている。

 兵頭誠之社長CEOは、「多様なリスクを適切に管理し、提案に含まれる計画の策定に既に取り組んでいる」と訴え、株主の理解を求めた。採決の結果、株主提案は反対多数で否決された。賛成率は20%だった。

左:​住友商事 社長CEO 兵頭 誠之氏 「サステナビリティを柱として事業ポートフォリオ改革を進める。次世代エネルギーや社会インフラなどに投資を振り向ける」(写真:ロイター/アフロ) 右:住友商事の株主総会では、環境対策の強化を求める株主提案を否決した。環境NGO(非政府組織)が会場前でアピール活動を展開した(写真:メコン・ウオッチ)
みずほフィナンシャルグループ 社長グループCEO 坂井 辰史氏
「カーボンニュートラルはビジネスリスクだけでなく機会として捉えていく。リサーチやコンサル機能を組み合わせ、企業の脱炭素を支援する」(写真:株主総会のインターネット配信)

 20年に同様の株主提案を受けたみずほフィナンシャルグループの賛成率は34.5%だった。20年より脱炭素の関心が高まる中、住友商事の20%という賛成率は低く見える。住友商事の21年3月期の最終損益は1531億円の赤字である。株主質問は、「赤字事業の理由は何か」「有利子負債の返済は大丈夫か」「経営陣の責任は」など、今後の経営に関する質問が多数を占めた。脱炭素も大事だがまずは経営再建を――。株主のこうしたメッセージが読み取れる。

 みずほフィナンシャルグループは21年、気候変動対策の進捗を問う株主質問が相次いだ。「取り組みはパリ協定に整合しているのか」「温室効果ガス排出量の把握はどうしているのか」などだ。同社企画グループ長の猪股尚志氏は、「取引先も含むCO₂排出削減目標について、22年度までに目標を設定する」と答えた。

 株主質問をした気候ネットワークの鈴木康子氏は総会後、「どのような指標で短期・中期の目標を掲げるかなどの詳細が決まっていない。ファイナンスの脱炭素化に速やかに移行できるかどうかは不透明で、さらなる方針強化が必要だ」と語った。

 脱炭素の波は、業種や業績に関係なく企業をのみ込んでいる。株主の関心はより高まっており、今後、同様の提案が増えそうだ。議案や経営者の賛成率が、株主の納得感を示すバロメーターとなる。