新しい取締役会で「利益と幸せの調和」を目指している。具体的にどういう姿をイメージしているか。

青井: 企業はこれまで売上高や利益、マーケットシェアを増やして競争に勝つといった経済の規模を追求する流れがずっと続いてきた。そうしているうちに環境や社会問題が山積みになり、ミレニアル世代やZ世代が企業に利益だけでなく社会貢献を求めるように変わっていった。

 働く価値観、人の価値観が変わってきている中で、売上高や利益など数値目標だけ掲げて経営することに誰もやりがいを感じられなくなってくるだろう。例えば、米ギャラップがやりがいを持って働いている社員がどれくらいいるかを調査した結果で日本は世界で最低水準だった(日経ESG編集部注:17年の調査で日本企業の「熱意あふれる社員」の割合は6%)。これは異常なことではないかと思った。

 自分がやりたいことでお金を稼げる、仕事と自分の人生の価値観が重なることを企業で実現する。我々の場合は将来世代に豊かな未来をつなげていきたい。そのために、脱炭素やサーキュラーエコノミー(循環経済)を進めることをビジネスにして利益を得る、一人ひとりの幸せをつくっていく。さらに、アニメやビーガン(肉や魚、乳製品など動物性食品を食べない完全菜食主義者)、K-POP(韓国の現代音楽)など、その人の「好き」をテーマにしたビジネスをどんどん増やそうとしている。

 今までは数字だけが目標になり、利益の中身についてあまり考えずにやってきた。やりたいことと利益が一体になることが「利益と幸せの調和」なのではないか。

利益と違い、幸せは金銭的価値で表しにくい。幸せが増えたかどうかをどのように検証するのか。

青井: それはこれからのチャレンジになる。例えば、脱炭素は分かりやすいので、CO2排出削減量を5年後に100万t以上にする目標を設定している。ただ、当社の店舗で使っている電気を再生可能エネルギーに切り替えるだけだと10万tにとどまる。今、50万世帯を目標にお客様に再エネへの切り替えを勧めており、協力してもらえれば90万t減らせる(日経ESG編集部注:丸井グループは20年9月から、同社のクレジットカード「エポスカード」会員を対象に、スマートフォンのアプリで簡単に電力契約を、みんな電力が販売している再エネ由来電力に切り替えられるサービスを提供中)。

 そうやって、社会でのCO2排出量、我々が「ビヨンドスコープ3(スコープ3は顧客や取引先といった社外で排出されるCO2を指す)」と呼んでいる排出をお客様を巻き込みながら減らすことで、丸井グループの10倍の排出を減らせる。これは、個人や国ではなかなかできない企業ならではの取り組みではないか。

 サーキュラーエコノミーについてはまだ検討中だ。お客様に聞くと、「循環型経済と聞いても何をしたらいいか分からない、選択肢を用意してくれればその中から選べる」という声があるので、選択肢の数やそれを選んでくれたお客様の人数を測定していくのは1つの案だろう。

 まずはこれから5年間かけて、走りながら1つ1つ客観的なデータに落とし込みながら、PDCA(計画-実行-検証-改善)サイクルを回して精度を高めていきたい。