EPSやROEは結果

新しい中期経営計画では、サステナビリティやWell-beingに関わる目標を「インパクト」と定義した。これは幸せの「見える化」と関係しているのか。

青井: 21年の3月でそれまでの中計が終わり、新しい計画をどうするか考えていた。中計で一番大事なのは一言で言えばKPI(重要業績評価指標)で、前の中計ではEPS(一株当たり利益)、ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を出していた。

 今回もEPSやROE、ROICをどうするかという話をしていたが、そのうちにやる気がしなくなっていった。我々はEPSやROEを上げるためにやっているのか。EPSをいくら、ROEを何%にすることが次の5年間でやる全てなのかと。

 もう少しやる気が起きる計画にしようと思い、インパクトを定義することにした。我々にはやりたいことがある。それが先にあって、結果としてEPSやROEがあるのであればやる気が湧く。この5年間で世の中は変わったが我々も変わった。

社員のWell-beingの伸長を測る指標として、「ESGプレミアム」と称するEPSと株価の差を使っている。

青井: 5~6年のスパンで見ると、当社ではEPSが2倍以上伸びているのに対して、株価は平均してその2~3割増しで推移している。長期的に見て一貫して利益の伸びを株価の伸びが上回っているのは、利益成長以外の何かが評価されているとしかいえない。

 上場したてのベンチャー企業ならこれからまだまだ成長すると期待されるだろうが、そうではない当社が利益以外に評価されるものは何か。それはESGではないかと考えている。

ESGプレミアムは人材に対する評価も含んでいると思われるが、今後、人的資本をどう「見える化」していくか。

青井: 他社と比較できなければ意味がないと考えている。ギャラップと協力して、熱意ある社員がどれぐらいいるかを調べ、国内外の企業と比べてどうなのかを見ていこうとしている。既に一部の社員を対象に調査を実施しており、今後は社外に公表していくつもりだ。

 結局のところ、個人の幸せを考えた場合、自分以外の誰かを幸せにすることが自分の幸せになるし、持続していく。我々のような小売業に勤めている人は利他の気持ちが強い。お客様に喜んでもらうことが自分の喜びであり、同僚の役に立てることが働きがいという人がすごく多い。我々のビジネスそのものが、お客様にもっと喜んでもらえるようになり、お客様の幸せをつくれているという実感があればやりがいが高まっていくのではないか。

 これまではどちらかというと社内に閉じた中で、社員たちをどう活性化していくか、やる気を出してもらうかを考えて「手挙げ」などを取り入れてきた。(日経ESG編集部注:昇進・昇格やグループ横断プロジェクトへの参画など、何をするにも自ら手を挙げる仕組みを導入している)。

 これからは、お客様や地域・社会といったいろんなステークホルダーとの関係の中で、自分たちの仕事が喜ばれた、努力が感謝されたなどフィードバックがもらえるようにするとより本質的な幸せに近づけるのかもしれない。

「日経ESG」2021年7月20日掲載記事を転載