アフラック生命保険は、CSV(共有価値の創造)を経営の中軸に据える。コアバリューと呼ぶ基本的価値観と企業文化を全社に浸透させ、実効性を高める。

多様なステークホルダーの利益を考慮する「ステークホルダー資本主義」という言葉が普及してきました。レイク会長は、グローバル社会の変化に対応して企業価値を高めるために、ステークホルダー資本主義を念頭に置いたCSV(共有価値の創造)経営が有効であると説いています。

チャールズ D.レイク II氏(以下、敬称略):日本では昔から近江商人の「三方よし」や渋沢栄一氏の『論語と算盤』を通してステークホルダー資本主義の考え方が受け継がれてきたので、何を今さらと言う人もいるでしょう。要諦は倫理と利潤を同時に確保する経営であり、最終的に社員やビジネスパートナーを守るため、企業が社会での存在意義を果たすためにも稼ぐ力が必要です。資本を効率よく戦略的に活用して利益を出し、株主にもリターンをしっかり提供することが求められます。

 CSV経営を戦略的に展開するには、「実効性が高いコーポレートガバナンス態勢の確立」「デジタル社会に合致した業務執行の機動性(アジリティー)の確保」「パフォーマンス志向の人財マネジメント制度の確立」─の3つの柱が必要だと考えます。その基盤となるのがコアバリュー、つまり企業として大切にしている基本的価値観と企業文化です。社員が意識せずとも当然のこととしてコアバリューを日ごろから実践している状況でなければ、CSV経営は効果的に実践できません。

 社会的課題全てを解決するのではなく、独自の資源や専門性を生かして向き合うべき社会的課題の解決に貢献することで必然的に経済的価値を創出し、持続可能な成長につなげるというのがCSV経営の考え方です。

社外取締役を最大限生かす

コーポレートガバナンスの実効性を高める上で、社外取締役の役割が重要です。2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、現在の東証1部に相当する「プライム市場」の上場企業に、取締役会の3分の1以上を社外取締役にするよう求めています。

チャールズ D.レイク II 氏
チャールズ D.レイク II 氏
アフラック生命保険 代表取締役会長。1962年米国生まれ。3歳から15歳まで東京に住み、日本の義務教育を受ける。米ジョージ・ワシントン大学法科大学院にて法学博士号(J.D.)取得。99年アフラック入社。日本における代表者・社長、同会長を経て、2018年の日本法人化に伴い同年から現職。東京エレクトロン、日本郵政の社外取締役を務める。著書に『社外取締役の兵法─グッドガバナンスの実践』(日本経済新聞出版)がある(写真:鈴木 愛子)

レイク:単に必要な人数の社外取締役をそろえるのか、それとも社外取締役の能力を最大限、効果的に活用して企業価値を高めようとするのかで結果は全く違ってくるでしょう。

 社外取締役を戦略的に活用するためには、経営陣・業務執行部が社外取締役に対してエンゲージメントを実施しなければいけません。企業戦略の大きな方向性を議論するために必要な経営情報や、適切なリスクテーク環境を醸成する上で重要な3つのライン(事業、管理、監査)の情報などが共有される必要があります。社外取締役には、自己研さんや高い倫理観と摩擦を恐れずに意見する精神的な独立性など、職責を全うするための努力と覚悟が求められます。

 業務執行部と社外取締役がお互いに協働し、自由闊達で建設的な議論を重ねていくことで重要な方針が適切に決定され、内部統制が確立されます。最終的には企業価値の向上や持続可能な成長につながるガバナンスが確保され、ステークホルダーの負託に応えられるのだと考えます。

2つ目の柱に挙げたアジリティーは、デジタル化が進んだ今こそ求められていると思います。

レイク:デジタル技術は社会の変化や多様化のスピードをこれまでと全く違うレベルで加速させています。経営のスピードを上げ、新たなニーズを満たす製品やサービスをお客様に提供しなければ企業は存続していけません。デジタル社会になり、競争相手と捉えるべき対象が拡大したと言えます。お客様満足にとどまらず、お客様が感動するレベルの製品やサービスを提供しなければ、期待には応えられなくなっています。

 そのような市場環境になっているので、先ほどお話しした3つ目の柱が重要になります。デジタル社会ではアジリティーを持った業務執行態勢を構築できる人財が不可欠であり、人財獲得競争がさらに激化するでしょう。優れた人財がアフラックに集まるように人財マネジメント制度を適切に運用することが経営の最重要課題だと考えています。