うつ病などの精神疾患で休職に至った就労者の復職支援として広まりつつある医療リワーク。この利用者の中には発達障害のある人も多い。医療リワークに取り組むさっぽろ駅前クリニック(北海道・札幌)ではきめ細やかな心理療法に取り組むことで行動変容が促され、復職率や就業継続率が高まっているという。サイコドラマ(心理劇)をプログラムに組み込み成果を上げている精神科専門医に、発達障害への医療リワークの有効性と今後の可能性について話を聞いた。

「発達障害=生来の特性であり治らない」に異議

 医療リワーク(以下リワーク)とは、うつ病などの精神疾患で休職している就労者に対し、復職と再休職予防を目的に医療機関で行われるリハビリテーションプログラム。会社への出勤を想定した時間割が組まれ、模擬オフィスワークやロールプレイングなどのほか、復職後に病気を再発しないための心理療法も行われる(医療リワークの概要はこちらの記事を参照)。リワークプログラムの実施医療機関からなる日本うつ病リワーク協会によれば、リワーク利用者の復職3年後の就業継続率は7割超、非利用者は2割以下とのデータもあり、高い成果を挙げている。

 では、背景に発達障害を持つ就労者もリワークの効果は得られるのだろうか。日本うつ病リワーク協会副理事長でもある、さっぽろ駅前クリニック理事長の横山太範氏は次のように話す。

「発達障害は生来の特性であり治らないと思われがちだが、正しい理解とはいえない。特に、成人するまで診断されてこなかった『大人の発達障害』では特性由来の不得手だけでなく、それが原因で叱責されたりいじめられたりなどのつらい経験が積み重なることにより後天的に付加される不得手や苦手意識にも苦しめられている。一口にコミュニケーションがとれないといっても、生来の特性として苦手であるパターンと、それがために対人トラブルを繰り返すなどして心を閉ざすようになり、コミュニケーション自体を拒むようになったパターンとが混在している」(横山氏)

横山 太範 (よこやま・もとのり)氏
横山 太範 (よこやま・もとのり)氏
医療法人心劇会さっぽろ駅前クリニック理事長・医学博士 2001年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻修了。東京大学医学部付属病院、北海道立精神保健福祉センターなどを経て、2005年さっぽろ駅前クリニックを開設。精神保健法指定医、日本集団精神療法学会認定医、東京サイコドラマ協会認定サイコドラマティスト、臨床心理士、日本医師会認定産業医などの資格を持ち、日本うつ病リワーク協会副理事長のほか、精神科領域の援助技法としての心理劇の普及に取り組む日本心理劇学会の理事長も務める。

 リワークでは、このうち後天的に表れた症状の改善が可能だという。「例えば、職場に近い環境を模したロールプレイングを行うことで、職場で不適応となった行動や対人関係のパターン等を本人が客観視しやすくなり、早期の修正につながる」(横山氏)。

 加えて、発達障害を持ち、似た体験をした者同士がその体験や気持ちを分かち合うことで、他者への恨みや、自己肯定感の低さがやわらいでいき、環境に適応できるようになっていく。「患者さん同士の支え合いを経験することが、発達障害の人にとってはたいへん有効な治療になる」と横山氏は話す。さっぽろ駅前クリニックでリワークプログラムを受けた発達障害を持つ参加者のうち、専門プログラムを終えた参加者の9割以上が復職12か月後も継続就労していたという(後述)。

 現在、多くの企業では職場に発達障害が疑われる社員がいても、ただ「仕事ができない」「空気が読めない」などとみなされ、発達障害と気づかれないまま、あるいは推察されても本人に指摘できないまま、本人も周囲も出口を見つけられないケースが非常に多い。しかし、医療リワークなどの治療により好転する可能性は大いにあると横山氏は指摘する。「もしその社員が、同じ年齢や経歴の社員と比べて5~6割程度のパフォーマンスしか発揮できないとしたら、1年のうち半年は働いていないのと同じ。それなら本人に半年休職してもらい、治療をしっかり受けてもらった方が、復職後のパフォーマンスも就労継続率も上がる可能性があり、会社にも本人にもメリットが大きい」(横山氏)。

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