去る2月26日、発達障害の人の就労支援に必要な知識とスキルの習得を目的とする、公益財団法人キリン福祉財団助成事業「JC-NET発達障害就労支援セミナー」(主催/社会福祉法人横浜やまびこの里、共催/NPO法人ジョブコーチ・ネットワーク)がオンラインおよび横浜市内の会場で2日間にわたり開催された。本記事では2日目の模様をお伝えする。

(セミナー概要と1日目の様子はこちら)

「行動観察」のポイントと、背景にある「認知機能」を知る

2日目の実践課程では、横浜市内の会場にて約6時間にわたり講義と演習が行われた。NPO法人ジョブコーチ・ネットワーク副理事長の若尾勝己氏を講師に迎え、実際に職場でよく起きるケースを題材に、問題解決のフローやポイントを学んだ。

 発達障害のある人の仕事ぶりの把握と問題解決のアセスメントには「行動観察」が重要となる。障害のあるなしに関わらず、そもそも人は行動するとき、視覚、聴覚といった感覚系機能から情報を入力し、過去の記憶や経験からその情報を処理、行動に至る、といったプロセスを踏む。「仕事がうまくいかない場面では、このプロセスのどこかに問題が生じていることが少なくない」と若尾氏は話す。

  従って発達障害のある人の対応をする際は、結果として表れた問題行動だけを見て対策を講じるのでは本質的な解決にならない。その人にどんな認知機能の特性があるのかを把握し、行動との関連づけを行うことが適切な支援につながる、という話であった。

[認知機能の特性と対応の一例]

情報の入力

  • 過度に集中してしまう→休憩を入れる
  • 同時に複数のことに注意を払えない→情報量をコントロールする
  • 作業を中断するとどこまでかがわからなくなる→リマインダーや手順書を活用する
  • 文字、もしくは図表だけでは理解できない→理解しやすい手順書を作成する など

情報処理

  • 複数の工程を段取りよく組み合わせることができない→チェックリストの活用
  • 時間的な見通しを立てて作業できない→行動予定表やタイマーの活用
  • 優先順位がつけられない→指示者が優先順位を決める
  • 物の整理ができない→置き場所の固定 など

 演習のグループディスカッションでは、講義で学んだ知識をもとに具体的な仕事における対応を学ぶ。まず、発達障害のある社員が、複数のパターンがあるコピー業務の説明を上司から受けているビデオを見て、想定される間違いと、その背景にはどんな認知機能の特性がありそうかを話し合う。その後、実際にコピー業務を行っているビデオを見て、起こったエラーと想定される理由や認知機能の特性を洗い出し、一つひとつどのように対応したらよいかをディスカッションした。

受講者は5~6人ずつに分かれ、横浜やまびこの里スタッフなどがトレーナーとして各グループにつき、ディスカッションや発表などを行った。受講者の所属は福祉事業所の職員、障害者雇用担当者や特例個会社の指導員など様々だ。(撮影:川田雅宏)
受講者は5~6人ずつに分かれ、横浜やまびこの里スタッフなどがトレーナーとして各グループにつき、ディスカッションや発表などを行った。受講者の所属は福祉事業所の職員、障害者雇用担当者や特例個会社の指導員など様々だ。(撮影:川田雅宏)