近年、「大人の発達障害」を抱える社員の職場での働き方について、対応に苦慮している企業人事部が増えています。そこで前回に続き、伊藤裕康医師に「大人の発達障害」を抱える社員への対応についてお聞きしていきます。発達障害の有無と、業務への支障の有無を切り分けて考えるところがスタートとなるようです。

発達障害があるからといって「苦手なことはしなくていい」という障害への配慮一辺倒となってしまうと、その人の仕事量が減るばかりで、働く充足感も得られない。こうした失敗事例から、「障害があろうとなかろうと、その人の能力が生かせること=本質的な仕事ができることが大切」という考えに至ったお話を伺いました(前回記事はこちら)。今回は、発達障害の人が本質的な仕事に取り組むためにはどうしたらいいのかについてお尋ねします。

神奈川産業保健総合支援センター 相談員
産業医科大学 産業精神保健学研究室 非常勤助教
医師
伊藤 裕康 氏
産業医科大学卒業。30社以上の嘱託産業医の経験を経て、株式会社アルバックなどで企業の専属産業医として10年以上勤務。神奈川産業保健総合支援センターの相談員、産業医科大学産業精神保健学研究室の非常勤助教、日本産業ストレス学会評議員など務める。産業医科大学産業医学ディプロマ、日本産業衛生学会 産業衛生指導医。

伊藤裕康医師(以下、伊藤):まず、よく相談を受けるのは、職場の他の人たちは「もしかしたら発達障害があるのではないか」と薄々気づいているのだけれど、本人はまったく無自覚のため、問題が解決の方向に進まない、という事例です。本人は困っていない(ように見える)。周りは大変困っている。

 この場合、産業医面談をして、医師が「何に困っているのですか?」と尋ねても、本人からは「いえ、別に何も困っていません」という答えが返ってきます。こうなると医師としてどうすることもできません。あまりにたくさんの問題があり、それが本人に明確に伝わっていないのです。

 何が問題なのかを整理してみましょう。問題の定義を間違えると、いつまでも本質的な解決にはたどり着きません。こちらを見てください。

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 まず、横軸は「障害の有無」。つまり、発達障害を含めた障害があるかないかという軸です。縦軸は「事例性の有無」。業務に支障があるかないかという軸です。さて、「会社において問題」なのはABCDのどれでしょうか。