発達障害を有していると思われる従業員が長く働き続けるための支援や評価、ジョブマッチングの在り方とは―特例子会社の取り組みからそのヒントを探る。明治安田ビジネスプラスは明治安田生命保険相互会社の事務サポートや福利厚生事業を受託する特例子会社だ。後編の今回は、同社の人事責任者に、人事制度の整備や採用時の取り組みを中心に話を聞いた。

 明治安田ビジネスプラスには現在約140人の障害を有する従業員が在籍する。95%前後という高い定着率(勤続1年以上)を維持し、モチベーションも高い。その6割強を占める発達障害社員も同様だ。高い定着率の背景には複層かつ多様な支援、一人ひとりの能力に合った目標設定と評価の仕組み、そして当事者が自身の適性と業務を照らし合わせることができる工夫が見られる。

“3層体制”の定着支援で不安定化を抑止

 発達障害には(人によっては)不注意によるミスが多い、コミュニケーションや社会性に偏りがあるといった特性が知られており、職場環境や人間関係などの変化に敏感なため、心身の安定が損なわれやすい。不安定化する要因はさまざまだ。特例子会社の明治安田ビジネスプラスでは当該者一人ひとりに対して多層的なメンバーが関わる体制を整備している。時短勤務や配置変更などの働き方の工夫で改善する場合や医療的な介入が必要な場合もある。

「メンバーの不安定化要因を見極め、それに応じた専門的知見をもつスタッフが解決にあたれるよう、当社独自の職種であるトレーナー(前編記事を参照)のほかにも、有資格者で構成された3層の支援体制を敷いている」と話すのは、同社で人材育成や定着支援の責任者を務める太田郁夫取締役人財開発部長だ。

太田 郁夫 氏
太田 郁夫 氏
明治安田ビジネスプラス 取締役 人財開発部長(撮影:川田雅宏)

「日常的なサポートとしては、精神保健福祉士、社会福祉士等[注]を保有する定着支援担当者が社内に常駐しており、定着支援担当がメンバーの異変を察知したり、メンバーの要望やトレーナーから相談を受けた際に本人との面接を行います。時短勤務への変更など人事面での対応で解決できる問題はこの段階で対処します。メンタル不調などでより専門的なサポートが必要な場合は、外部医療機関の臨床心理士との面談をセッティングします。さらに、弊社産業医である精神科医が月1回の定期訪問を実施しており、医療的な観点で必要と判断した場合、メンバーとの面談を委託しています」(太田取締役)

 特に環境変化の大きい入社直後や配置転換のタイミングでは、トレーナーがメンバーの心身の状態にいつも以上に気を配っているが、こうした専門家のサポートを得られていることが定着率向上に一役買っているという。

[注] 精神保健福祉士:精神障害等によって社会生活上の支援を必要とする人や、メンタルヘルスの課題を抱える人に対し、相談援助や環境調整などを行う専門職の国家資格。精神科ソーシャルワーカー(PSW)とも呼ばれる。
社会福祉士:障害者や生活困窮者など、心身や環境上の理由で生活上の支援を必要とする人に対し、相談援助などを行う専門職の国家資格。