HRBPは経営の“御用聞き”になるな

 なお、外資系企業と日本企業ではHRBPに求められるスキルは異なる、と有沢氏は指摘する。「外資のHRBPは必ず人事のスペシャリストで、人事の専門能力は高いが事業を知らないことも多い。部門制、事業部制を敷いている外資はこれでよいが、日本企業でこのタイプのHRBPを導入すると失敗する」と有沢氏は警鐘を鳴らす。

 「経営に資する人事」がHRBPのミッションである、と語るのは富士通ビジネスマネジメント本部人事部マネジャーの堀江康弘氏だ。同社は2020年4月にHRBPを導入した。「HRBPは現場のビジネスを深く理解し、経営や組織の課題をしっかりとらえる必要がある。これがないと、経営層の信頼を得て耳を傾けてもらうのは難しい」と堀江氏は指摘する。このためHRBPには、人事のほか財務など広範囲な知識が求められる。

 「HRBPは経営層や現場の“御用聞き”にならないことも大事」と堀江氏は続ける。「言われたことをそのまま受け入れるのではなく、時には相手にとって耳の痛い話をせざるを得ないこともある」(堀江氏)

 堀江氏がビジネスグループ長や本部長と対話する際、その組織がきちんと機能しているかを見る。「例えばエンゲージメント調査の評価が低い部署には、本部長の戦略が部内にしっかり理解されていないのではないかと指摘することもある。各組織のビジネスをリスペクトしつつ、HRBPとしての志を持って問題点を指摘し提言する勇気が必要」と語る。

 現場への提言も、経営層の戦略の受け売りではなくHRBP自身が咀嚼(そしゃく)し自分の言葉で伝える。人を見極める力、人に働きかける力、ファシリテーション能力も、HRBPに必要な資質だと堀江氏は語る。「当社のHRBPはマネジャーと担当者のペアで約3000人の組織を見ている。HRBPは自分が組織の最高人事責任者である、というくらいの意気込みで向き合わないと、ビジネスパートナーの役割を果たせないと感じている」(堀江氏)