HRBPは対立をポジティブにとらえよ

 冒頭で「HRBPが御用聞きになってはいけない」という話を紹介した。経営側や事業責任者との対立を恐れるあまり、自分の意見を言えずに相手の依頼だけを受け入れてしまう「御用聞きHRBP」を戒めるのは、積水ハウス執行役員人材開発担当の藤間美樹氏だ。

 藤間氏が強調するのは、対立を受け入れることの大切さだ。海外経験の長い藤間氏は「日本人が対立と考える場合でも、欧米人にとっては議論のレベルであることも多い」とし、「意見の食い違いがあっても相手に耳を傾け、論理的に議論して合意点を見いだす努力をすべき」と語る。

 経営との間に対立が起こった場合、「HRBPは、対立の構造を明確にすることがポイント。経営側の意図をしっかりくみ取り、そのうえで人事の視点から自分の判断と意見をきちんと述べるべきだ」と藤間氏は語る。「これらをきちんと行わないHRBPは御用聞きに過ぎず、HRBP失格である」と手厳しい。

 社長とHRBPの意見の対立を何度か経験している藤間氏は「お互いの意図を理解し議論を尽くしたうえでも、社長とHRBPがぶつかることがある。そのときは『責任と権限はセット』と考え、最終的に責任を取るべき社長の決定に従う」と語る。続けて「ときには人事として納得がいかない『自分の見解が正しい』と感じることもあるだろう。その場合、時期を改めて具申する方法もある」とアドバイスする。諦めずに粘り強く経営に意見するのも、HRBPの仕事というわけだ。

 一方、「当社はHRBPと経営側の意見の対立が発生しない構造になっている」と語るのは、カゴメ常務執行役員CHOの有沢正人氏だ。「2017年に人事の最終意思決定機関である人材開発委員会をつくった。人材開発委員会は社長、専務2人、CHOから構成される。HRBPは従業員の異動などについてオーバージャッジする権限を持ち、HRBPの意見は一度この委員会で吸収する仕組み」(有沢氏)だという。

 「例えば人材開発委員会が従業員の異動を決めた場合でも、HRBPが異論を唱えることができる。HRBPのほうが現場の意見に立脚して先を見ているので、説得力がある」(有沢氏)。HRBPの意見を委員会で諮るため、経営者との対立が起こらない構造になっているのだ。人材開発委員会はもともと、「社長が従業員の異動を独断で決めるのを防ぐ目的で設置された」と有沢氏は説明する。

 人材開発委員会に先立ち、カゴメは2016年に報酬指名諮問委員会を設置している。「本部長や執行役員などの人事に関しては同委員会の社外取締役3人の意見を入れ、マーケットから見たガバナンスも利かせている」(有沢氏)。同社では人材開発委員会と報酬指名諮問委員会がともに機能し、様々な案件を合議制で決めることにより、ダイレクトな意見の対立を起こさない仕組みになっている。

 最終回の次回は、「HRBP導入に失敗しない方法」を見ていく。