「HRBPの押し売り」が失敗につながる

 「これまでHRBPを導入してこなかった会社が、いきなりすべての事業部にHRBPを配置するのはまず不可能」と指摘するのは、積水ハウス執行役員人材開発担当の藤間美樹氏だ。「HRBPの導入が失敗する要因は主に2つある。1つはHRBP自身の力不足で、もう1つは部門がHRBPを必要と感じていない場合」だとして、「HRBPの押し売り」が導入の失敗を生むと話す。

 HRBPの導入に失敗しない方法として藤間氏は、「まずはHRBPが必要と思われる部門に、実力のあるHRBPを配属することから始めるべき」と指摘する。「優秀なHRBP候補が一人だけなら、その人材が実力を発揮できる部門に配属し、人事部全体でサポートしていく。その部門でHRBPが実績を上げて価値が認識されれば、他部門からもHRBPの要請が来るだろう。こうして2人目、3人目のHRBPを育成したり外部から採用したりして、HRBPの人材プールを大きくしていけばよい」(藤間氏)

 「日本企業で、外資系企業のHRBPの仕組みをそのまま導入しようとすると失敗する」と警鐘を鳴らすのは、カゴメ常務執行役員CHOの有沢正人氏だ。「海外の企業は、これまでの日本企業と違って人事が部門の現場に足を運ぶ慣習がなく、HRBPは人事と部門の橋渡しを担う存在として必須」と語る。同時に、スペシャリストとしてのHRBPは、それぞれの部門の事業内容まで深く理解していなくともよい。こうしたことから「海外と人事慣習が異なる日本企業では、自社の経営戦略と人事戦略にあった形のHRBPを検討することが大事」と有沢氏は語る。

 有沢氏は「日本企業でHRBPを導入する場合、人事しか経験のない人や部門の現場を知らない人をHRBPに登用すると失敗することが多い」とも指摘する。さらに、HRBPの意見が経営側に通らない、HRBPが社内で孤立してしまうといった状況を避ける仕組みも必要になる。「例えばカゴメでは人材開発委員会を設けることで、HRBPと経営側がスムーズに対話できるようにし、それがマーケットからも評価されるようになっている(「Q HRBPと経営側の意見が対立したときはどうする?」参照)」(有沢氏)

 こうしてHRBPに就いた後のキャリアパスはどのように考えればよいのか。カゴメの場合、「当社はHRBPを専門職ではなくキャリアパスの一環と考えている。3年交代で現場に戻ってもらい、いずれは役員を目指してもらう」(有沢氏)と明快だ。同社がHRBPを導入した2017年には、生産・イノベーション畑の人材、元支店長など営業現場経験がある人材、本社で部長職を歴任した人材などをHRBPに登用した。「あえて人事出身でない人にHRBPを任せた。将来はできるだけ多くの人にHRBPを経験してもらい、人事の業務に興味を持ってもらいたい」(有沢氏)

 HRBPを設置してから、カゴメでは人事部への異動を希望する社員が増えたという。「多くの会社では、人事は従業員から敵対視されがち。人事制度を変えると言うと、『不利益変更』と思われることも多い。しかし制度を変えるときに、従業員が期待感やワクワク感を持つようになれば人事の在り方も変わってくる。当社にとってHRBPは、社員に『人事は面白そう』と思ってもらうためのシンボリックな制度」と有沢氏は語る。