【概要】 企業がステークホルダーに開示する情報のうち、財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書など)で示される「財務情報」以外の情報をいう。知的財産や人的資本などの無形資産のほか、企業理念や経営戦略、コーポレートガバナンス、ビジネスモデル、企業ブランド(のれん)、環境問題や社会問題への対応などの情報が含まれる。

 企業の価値は、金融資産や固定資産、業績など、財務諸表に表れる情報を基に評価されてきた。しかし産業構造が変化し、その中心が製造業や設備業からITやサービス業へ移ると、必ずしも金融資産や固定資産を持たない企業が莫大な利益を生み出すようになる。そうした新しい企業の競争力の源泉は、人材やアイデア、ビジネスモデル、企業ブランドなど、財務諸表に表れないものが中心だ。

 そこで投資家は企業の価値を正しく評価するため、財務諸表に表れない非財務情報の開示を企業に求めるようになった。こうした動きに呼応し、上場企業や大手企業を中心に非財務情報の開示が進んでいる。それらは「統合報告書」や「有価証券報告書」「CSR報告書」などを通じて公開されることが多い。

 非財務情報は企業ごとに独自の基準や表現によって開示することもできるが、一定の基準がなければ企業同士の比較が難しい。そこで欧米を中心に、非財務情報の開示に基準を設ける動きが進んでいる。2021年に設立された国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は気候変動に関する情報開示の国際基準の策定に着手し、人的資本関連の議論も始まっている。また、国際標準化機構(ISO)も人的資本に関する情報を開示する際のガイドラインとして国際規格「ISO30414」を発行し、注目が集まっている。

効果 投資家の関心に応え、良質な労働力を確保

 非財務情報の開示に積極的な企業に対する投資家の関心は高く、資本市場では有利に働く。例えば環境負荷や人的資本、ガバナンスなどのリスクとその対応策を明らかにすることで、投資家が投資先企業を選ぶ際の判断材料となる。

 人的資本の情報には、求職者をはじめとする労働者の注目も集まっている。人に対する経営姿勢を積極的にアピールすることで、優秀な人材を呼び込み、良質な労働力を維持しやすくなる。

事例 非財務情報の開示を義務づける動きが加速

 上場企業や大手企業を中心に、非財務情報の開示が広がっている。米国証券取引委員会(SEC)は、2020年11月より米国の上場企業に対して人的資本の情報開示を義務化した。米国連邦議会では、上場企業にESG(環境・社会・ガバナンス)に関する情報開示を義務化する法律「H.R.1187 - コーポレートガバナンスの改善および投資家保護法」の検討が進んでいる。

 欧州委員会では、従業員500人以上の企業に非財務情報の開示を求める「非財務情報開示指令」を2017年から適用している。2021年4月にはこの対象企業を中小企業にまで広げ、範囲も環境、社会的課題、ガバナンスへと広げる改正案「企業持続可能性開示指令案」を発表した。

 日本でも2021年6月に改定された東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードで法令に基づく非財務情報の開示を求めているほか、「法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべき」とし、サステナビリティーの観点から気候変動や人権、危機管理、人的資本などの情報開示を促している。

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