人材採用には、自社サイトやSNSでの情報発信、採用説明会実施、人材紹介会社の利用、採用メディアへの出稿、合同会社説明会への出展など、さまざまな手段がある。しかし人材獲得競争が激しくなる中でコストも嵩み、効率的な採用が難しくなっている。リファラル採用ではこのようなコストを削減することができる。また、現場の従業員による「目利き」による紹介なので、まだ転職活動を始めていない潜在層や優秀な人材への接触も見込むことができる。
ただしリファラル採用は、従業員に対して人材の募集を「委託する」行為であることに注意しなければならない。職業安定法の定めでは、有料の職業紹介事業を行う場合は厚生労働大臣の許可が義務付けられている[注1]。リファラル採用を業務の一つとして定める場合はこの届け出や許可の必要はないが、就業規則にリファラル採用が業務の一環である旨を明記しなければならない。また、リファラル採用にかかる従業員の残業代や採用候補者との飲食費などのコストを把握し、賃金や給与などの形で適切なインセンティブを設定する必要がある[注2]。社内にはリファラル採用が「自社や自分の職場をより良くする取り組み」であることを発信・周知する。その際、リファラル採用専用ツールを導入する企業もある。
効果 人材定着率と従業員エンゲージメント向上に寄与
リファラル採用ではコスト削減というメリットに加え、リクルーターの従業員が候補者の人柄やスキルをあらかじめ把握できているため、採用のミスマッチが起こりにくく定着率の向上が期待できる。一方で、リクルーターの従業員自身が自社の事業戦略、組織の状況、自らのキャリアを考え直す機会ともなるため、従業員エンゲージメント向上や離職率低減にもつながる。コロナ禍でオンライン選考が広がるなか、リファラル採用は、候補者にとっては社風や職場の雰囲気をリアルに知ることができ、企業にとっては候補者の人となりが把握できる採用方法だといえる。
事例 デジタル人材や即戦力採用にリファラル採用を活用
メルカリ、グーグル、ヤフーなどのインターネット企業では、エンジニアを中心にすでにリファラル採用が定着している。それ以外の企業でも、少子高齢化を背景に中途採用を増やすなかで、リファラル採用への取り組みが始まっている。例えば、トヨタ自動車では中途採用割合を将来的に50%まで引き上げることを目標とし、その方策として2020年にリファラル採用制度を導入した。事業部門の現場が主体となって取り組むことで、同社が求めるソフトウエア人材や100職種以上の求人に的確な人材採用を進めていくという。